<芽生えの春・有田工センバツへ>第1部/下 守備から流れを作る /佐賀
梅崎信司さん(42)が監督に就任した2018年以来、有田工は「守備から流れを作ってつなぐ野球」を目指してきた。仲間から名手と一目置かれる山口駿介中堅手(2年)は「今年のチームは投手力がある。(塚本)侑弥は打たせて取るピッチャーだから、守備でエラーをせずにカバーしていく」と意気込みを語る。山口洸生二塁手(同)は昨秋の県予選、九州地区大会の全8試合で無失策。梅崎監督は「努力できる選手」と評価している。 梅崎監督は守備の基本練習を大切にする。ボール回しでは、各塁を回して本塁まで戻す送球を10周、63秒以内が目標だ。落球や暴投すると先輩後輩関係なく「集中しろよ。ボールの持ち替えが遅い」などと鼓舞する。目標時間を達成できなければ、約400メートル走が待っている。 上原風雅主将(2年)は打線について「好機に連打したい」と語る。昨秋の県予選や九州地区大会の全8試合でチーム最高打率4割7分1厘だった塚本侑弥投手や、二塁打3本の土谷凱生右翼手、3番の山口駿介中堅手ら2年生が打線をけん引。1年生も4番の角田貴弘一塁手や好機に強い北川晴翔左翼手がいる。梅崎監督は「ランナーを置いて塚本に回したいので8、9番が出塁してほしい」と話し、スイッチヒッターに挑戦中の山口洸生二塁手(同)や相川翔大三塁手(1年)にも期待を寄せる。 犠打の練習も繰り返す。選手は防具を着けて片膝をついて構え、まずはグローブで捕球。次はグローブをバットに持ちかえてバントをする。梅崎監督は「キャッチャーが取れるのだからバントもできる。ボールへの恐怖心がなくなり、選手は次第にボールに慣れてきている」と精度に自信を深めている。 昨秋の九州地区大会後は体作りにも励んできた。自然豊かな学校近くの山でのランニングをはじめ、21年12月には熊本県美里町にある3333段の「日本一の石段」をみんなで駆け上がった。趣味が筋肉トレーニングの浦川祐伯部長(30)の指導のもと週3日は約1時間かけたウエートトレーニング。選手は毎日体重を計測し、Sランク(理想体重プラス5キロ以上かつ体脂肪率15%以下)、Aランク(理想体重プラス5キロ以上かつ体脂肪率減少)などに分けて体作りをしてきた。 昨秋の大会での躍進から初めてのセンバツの切符を手にし、芽生えの春を迎えた有田工。守備、打撃、体作りと力を着実につけ、厳しい冬を耐えた選手が甲子園で初勝利をした時、満開の春へと移り変わる。【井土映美】