なぜ横浜FCの53歳”キング”カズ、42歳中村俊輔、39歳松井大輔がJ1舞台で揃い踏みしたのか?
「順位が一番上で、大勝ばかりしているチームに対して、チャンスを多く作れた。フロンターレ側がやりにくいと感じたかどうかはわからないけど、次につながるゲームができたと思う」 横浜FCで再びチームメイトになって3年目。けがもあって今シーズンの初先発を、昨年から挑戦しているボランチで果たした松井は、試合後にカズたちとテーマにあげた手応えの一端を明かした。 トルシエジャパン時代の国際Aマッチでカズと4度共演。2000年2月のブルネイ代表戦ではゴールでも共演している俊輔は、昨夏にジュビロ磐田から移籍した横浜FCで再会を果たしたカズを「何だか唯一無二だし、それでいて不思議な存在」と位置づけたことがある。 「この人に自分のいいプレーを見てほしいと思うから、やっぱり手を抜くことができないし、それでいて同じ選手だし。53歳でのカズダンス、見たくない? 見たいよね。オレたちだって見たいから」 昨シーズンのボランチから、今シーズンは本職の2列目に復帰。一の位と十の位を足して「10」になる背番号「46」はそのままに、3度目の先発で、横浜FCの一員としてリーグ戦で初めてカズと共演した。 試合はカズがベンチへ下がった4分後に俊輔と松井も、それぞれMFレアンドロ・ドミンゲスとMF手塚康平に交代。後半22分に再び旗手に追加点を決められたが、その後は押し返す時間帯が続き、29分にはカズからゲームキャプテンを引き継いだ佐藤が鮮やかなミドルシュートを決めた。
その後もレアンドロ・ドミンゲス、そして斉藤の一撃が相手ゴールを脅かす場面もあった。チームとして、そして個人としての手応えと課題を整理しながら、カズは今後の戦いを見すえている。 「フロンターレは最後の仕上げのところが素晴らしかったので、自分たちが経験したことを次に生かしていきたい。チーム内の競争のなかで頑張らないといけないんですけど、今後のリーグ戦でまたチャンスを得られたときには、フロンターレにこういう試合ができたことをつなげていきたい」 Jリーグが産声をあげた1993シーズンのリーグ戦でプレーした、ただ一人の選手にカズがなって久しい。そしてサントリーシリーズが華々しく開幕して4試合目。5月26日の鹿島アントラーズ戦で、ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)のキャプテンを務めていたカズがJ1初ゴールを延長Vゴールとして決めた舞台が、当時はヴェルディのホームだった等々力陸上競技場だった。 「言われて思い出しました。確かにここでしたね。僕がここをホームグラウンドとして戦っていたのも相当昔の話なので、そういうことはあまり意識しないというか、考えもしなかったですね」 かつてプレーしたイタリアを含めた海外メディアでもすぐに報じられ、Jリーグの村井満チェアマンもJ1最年長出場記録更新に対してコメントを発表した。それでも、27年前のJ1初ゴールと同じく、カズにとってはすべてがすでに過去のこと。次のチャンスをもぎ取るための準備と努力を積み重ねていくことを含めて、永遠のチャレンジャーとしてキングと呼ばれる男は走り続けていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)