【いくら効率化しても「最大の障壁」が…】100億かけても「DXの効果が全然出ない」3つの理由 いったい何が問題?専門家が解説
その答えは、多くの場合「無理」ということになります。 理由はシンプルで、削減する従業員の業務を、別の従業員に移管することが往々にして難しいからです。 同じ業務を多くの人数で担当している企業、たとえばBPOの受託企業などでない限り、1人ひとりの業務量・業務時間は減ったとしても、業務の移管は容易にはできません。 そのため、従事する人数、あるいは従業員数はまったく減らないという「効果計算のトリック」となってしまうことがほとんどです。
もちろん、このトリックをうまく避けている企業もあります。 A社は、200人が従事するコーポレート業務での「守りのDX」に取り組みました(前回記事参照)。 目標とした60人分の業務量削減が見えてくるのに合わせて、1人ひとりの担当業務の再配置を行い、150人でコーポレート業務を回すことに成功しました。 60人分すべては無理だったものの、50人分の削減を実現したわけです。 A社の場合は、伝統的に業務の標準化を徹底していました。
要資格の業務以外は、属人化を排除し、社員の多能工化が定着していたのです。業務移管がスムースに進んだことが「効果計算のトリック」に惑わされずにすんだ成功要因でした。 ちなみに余剰となった50人については、事業部門や子会社の「現場のスタッフ機能の高度化」要員として、異動先のコスト負担はなしで異動させることができました。 ただし、事業部門の現場のスタッフ機能の高度化が、A社のボトムラインにどのように効いたかの因果関係は、いまだに明らかになっていません。
A社がこの「守りのDX」で、本来の狙いである「コスト削減」に成功したのかどうかは、立場によって判断が分かれるところですし、今後も結論は出ないでしょう。 ■【理由2】「解雇なしのコスト減」は不可能 DXの効果が出ない理由の2つ目は、従業員の解雇ができない以上、コストは減らないという問題です。 「効果計算のトリック」を首尾よく乗り越えたとしても、削減する従業員をどう選び、どう処遇するのかという悩ましい問題が残ります。