人流復活で増えるトコジラミ「深刻に捉えすぎず、冷静に対策を」 自ら刺されて図鑑を作った皮膚科医 #なぜ話題
自ら刺された写真で図鑑を刊行 「救急外来で重宝していただいている」
実は夏秋さんは昨年、衛生害虫に自分が実際に刺されてみて、その臨床写真とともに症状や治療法を解説するという図鑑を出版して話題になっている。 本のタイトルは『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版』(Gakken)という。初版以来10年ぶりの改訂で、ネットでは専門家らが「あの名著が再び!」と盛り上がった。 「皮膚科診療ではもちろん、夜間の救急外来の現場でも重宝していただいていると聞いています。というのは夜間は皮膚科の専門医も不在で、何らかの虫に刺された患者さんを診察してもよくわからない。そこで私の本を参考にすれば対応できることが多いそうです。また高価な専門書なんですが(1万5400円)、昆虫好きの子どもたちが夢中になって眺めていると聞いて、嬉しいですね」 掲載されている症例写真の約7割が、夏秋さんが自ら刺されて撮ったもの。たとえばトコジラミに関しては、《吸血開始直後のトコジラミ》と《吸血終了直前のトコジラミ》の写真がある。
刺したあとも、赤い刺し痕が並んだ皮膚の写真を載せて説明する。
「刺されて5分後、1時間後、1日後とか全経過を載せているところもあります。患者さんに説明するときにも、『かゆいでしょうこれ、でも明日かあさってぐらいに治まりますから』と言えるんです。自分で経験して全経過がわかっているので説明できるのがすごく大きい」
患部がどのような経過をたどるか見たかった 「自分で刺されるしかない」
臨床の現場で非常に役立つだろうとは想像できるのだが、それにしても大変な仕事ではないか。なぜそんな思いをしてこの本を書いたのだろう。 「子どものころから昆虫博士になりたいと夢を見るぐらいの昆虫好き。医者になってアレルギーの研究をしていたんですが、虫刺されの大半がアレルギー反応なんですね。皮膚科の医者で衛生害虫に詳しい人はそんなにいないので、両方の知識を融合させて生かしたかった。また写真撮影も好きで、休日にはよく山の中で昆虫の生態写真を撮っていました。そうしたら、やたら虫に刺されまくるわけですよ(笑)。皮膚科の医者で昆虫に詳しくて、写真も撮れて、虫刺されも人一倍経験しているということで(笑)、こういう本を書けるのは自分しかいないだろうと思いました」