就職や異動で発覚した「発達障害グレーゾーン」、職場でどう対応すればいいのか?
企業内で「発達障害グレーゾーン」の悩みが増えています。発達障害グレーゾーンとは、発達障害の特性はあるものの、診断基準を満たしていない状態を指し、程度の差こそあれ、自分も当てはまるという人が多いものです。ただ、グレーゾーンとしての特性上、障がい者手帳などがなくても配慮を受けられるのか?といった相談が多く寄せられると言います。たとえばBさん(20代)はシステム開発では優秀でしたが、会議での発言や顧客対応が苦手で、周囲とのトラブルが増えていました。こうした問題に対して、上司はどう対応すればいいのでしょうか。ストレスマネジメント専門家の舟木彩乃氏が解説します。 【詳細な図や写真】「安全配慮義務」や「合理的配慮」がキーワードとなる(Photo/Shutterstock.com)
※本記事は『発達障害グレーゾーンの部下たち』を再構成したものです。
キーワードは「安全配慮義務」と「合理的配慮」
企業でカウンセリングをしていると、発達障害グレーゾーンについての悩みを抱えている当事者やその上司から、「障害者手帳を持っていない場合でも、会社側から配慮をしてもらうことは可能ですか?」といった類いの質問を受けることがあります。 答えは、「可能」です。 この問いについて考える場合、「安全配慮義務」や「合理的配慮」がキーワードになります。労働契約法第5条は、使用者(雇用主)に「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」と安全配慮義務を課しています。会社で毎年行われる健康診断も、会社が労働者を健康な状態で働かせるという安全配慮義務の一環だと考えることができます。 雇用主がすべき配慮には、当然のことながら、労働者のメンタルヘルス対策など精神的な健康への配慮も含まれます。冒頭の質問で出てきた「障害者手帳」の有無は、安全配慮義務とは関係ありません。 会社側は、安全配慮義務を果たすために、従業員各々の健康に関する情報を得て、保健指導を含む適切な就業上の措置を講ずることが求められています。具体的な措置の内容は、職場の管理監督者(上司など)に委ねられることもあります。 うつ状態で休職していた従業員が復職した場合、産業医などが、主治医の診断や本人の状態に基づいて、業務量や勤務時間の調整を本人の上司と相談します。なお、健康診断に関しては、労働者には自己保健義務が課せられており(労働安全衛生法第66条)、健康異常の申告や健康管理措置への協力をしなければなりません。