就職や異動で発覚した「発達障害グレーゾーン」、職場でどう対応すればいいのか?
部下がグレーゾーンかも?と思ったら
発達障害に関して、カウンセラーである筆者のところに相談にくる人は、本人が「自分は発達障害かもしれない」と思っているパターンのほか、「部下が発達障害かもしれない」と部下の発達障害を疑う上司も少なくありません。後者の場合、上司は、部下の仕事ぶりや言動に悩まされていることが多く、すでに両者の人間関係に問題を抱えている場合がほとんどです。 筆者は、上司のメンタルケアなども視野に入れながら、どのような言動から部下の発達障害を疑うに至ったのか、そのエピソードを丁寧に聞くようにしています。それと同時に、部下を発達障害と決めつけているような上司に対しては、疾病性(診断名)にこだわるのではなく、事例性(仕事に出ている影響)で検討していくよう促すことを心がけています。 そのうえで、「どのようなことで具体的に困っているのか」「上司や同僚でフォローできそうなことはあるか」について話し合うようにしています。当然ですが、上司の話だけで部下が発達障害か否かをジャッジすることは不可能で、そもそもASDとADHDの診断基準ではカテゴリーが重なり合っていたりすることもあるため、医学的な分類が無意味というケースもあります。 ただ、発達障害についてネットなどで調べ、少し知識がある上司は、部下の特異な言動を取り上げて「こんなことがあったのでADHDだと思う」とか「記憶力だけは抜群なのでASDだと思う」など、安易に診断名と結びつけるような発言も少なくありません。 さらに、この考えを本人に伝えたという上司もいましたが、これはもってのほかです。不用意に本人を傷つける恐れがあるだけでなく、ハラスメントに該当する可能性も高いといえます。 このように、部下の特異な言動から発達障害を疑うよりも、まずは事例性からサポート案を試してみることが重要です。それでも難しいようであれば、遅刻の回数や叱責される内容などの客観的な事実から、受診やカウンセリングを勧めるのも方法の1つです。 グレーゾーンの問題は、いざ直面したときにはじめてその難しさに気づくことが多いと思います。本記事を読んで、さらに詳しい事例や対応方法について興味を持たれた方は、よろしければ拙著「発達障害グレーゾーンの部下たち」をぜひご一読ください。
※本記事は『発達障害グレーゾーンの部下たち』を再構成したものです。
執筆:舟木彩乃(ストレスマネジメント専門家)