就職や異動で発覚した「発達障害グレーゾーン」、職場でどう対応すればいいのか?
「合理的配慮」とは何か
「合理的配慮」は、一般的に聞き慣れない言葉ですが、「障害者差別解消法」という法律に出てきます。以下、内閣府の提供する情報をもとに合理的配慮について解説します。 「障害者差別解消法」では、行政機関や事業者に対して、障害のある人(障害者)への障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止し、障害のある人から申し出があった場合に「合理的配慮」を提供する義務を課しています。 障害者とは、障害者手帳を持っている人だけではなく、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害や高次脳機能障害のある人も含む)、その他の心身の機能に障害(難病などに起因する障害も含む)がある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に制限を受けている人すべてを指します。もちろん、障害のある子どもも含まれます。 職場で合理的配慮を提供するにあたっては、社会的なバリアを取り除くためにはどうすれば良いか、障害者と事業者が対話を重ね、ともに解決策を検討していくことが重要です。 このような双方のやり取りを「建設的対話」といいます。障害者からの申し出への対応が難しい場合でも、双方が持っている情報や意見を伝え合って建設的対話に努めることで、代わりの手段を見つけていくこともできます。 発達障害で「障害者手帳」がない場合でも、本人が合理的配慮を求めた場合、職場は過重な負担にならない範囲で措置を講じることが求められます。たとえば、機械音に敏感で仕事に集中できない人が、上司と話し合い、コピー機から離れた席にしてもらうなどです。具体的にどのような措置をとるかを見つけるためには、お互いが気持ちよく、効率よく仕事を遂行できるよう、歩み寄りながら対話を重ねていくことが必要です。
社会に出てから発覚するグレーゾーン
近年、社会に出てから初めて発達障害を疑い、精神科や心療内科を受診する人が増えています。企業でカウンセリングをしていても、「自分は発達障害かもしれない」という悩みを抱えて相談にくる人が少なくありません。メディアなどで頻繁に発達障害が取り上げられることも影響しているでしょうが、社会構造が複雑になり、適応できない場面が増えてきたことも一因ではないかと思われます。 筆者のところに発達障害を疑ってカウンセリングにくる人は、比較的若い世代が多いように感じます。学生時代は環境に適応できていたけれど、社会に出てから適応が難しくなり、ネットなどで調べると発達障害の特性が自分に当てはまるので心配になったという人が多いです。先述しましたが、発達障害は脳機能の発達に関する障害で先天的なものとされていることから、気づいていなかっただけで、社会人になって初めて発達障害を発症することはありません。グレーゾーンはなおさら、社会に出てから発覚することが多いといえます。