「キー局の中で一歩先んじた印象」と関係者 日テレが「読売テレビ」など基幹4局を統合する思惑
ついに「テレビ局再編」の号砲が鳴ったのか。 日本テレビホールディングス(HD)は11月29日、読売テレビ放送などの系列で基幹局の4社が認定持ち株会社を設立して経営統合すると発表した。同一系列の基幹局同士、かつ広域圏の放送局を複数、持ち株会社の傘下に収める形での経営統合は初めてのケースとなる。 【図で見る】日本テレビホールディングスのテレビ広告収入の内訳と推移 人口減少やテレビ離れによる広告収入の漸減など取り巻く環境が厳しさを増し、地方局は苦境に陥っている。その再編が幕を開けた形だ。
■総務省の態度変化と軌を一にした動き 「今年から来年にかけて、地方局がいくつか消滅するかもしれない」 今春、放送業界の事情に詳しい関係者はこのように語り、地方局の再編についてほのめかしていた。 この関係者によれば、地方銀行の再編を陰に陽に推し進めていた金融庁とは違い、「総務省はこれまで基本的にテレビ局任せで、自ら動こうとはしなかった」という。 しかしコロナ禍に加え、広告がインターネットに流れるなど売り上げが軒並み低迷している地方局の苦境を目の当たりにし、「さすがに動かないとまずいと考え、水面下で再編に向けて重い腰を上げた」と明かす。こうした動きと軌を一にして、日本テレビHDが動いたというわけだ。
統合のスキームは次のようなものとなる。札幌テレビ放送、中京テレビ放送、読売テレビ放送、そして福岡放送の4社が、2025年4月1日に共同株式移転方式で認定放送持ち株会社「読売中京FSホールディングス(FYCS)」を設立。4社はFYCSの完全子会社となる。 日本テレビHDはFYCSの筆頭株主として株式の20%以上を保有し、持ち分法適用会社とする。読売新聞グループも約15%の株式を持ち第2位の株主となる見通し。統合する4社の株主には、現在保有している株式に代わり、新会社の株式を交付する予定だという。
経営統合の狙いについて日本テレビHDは、「国内の人口減少やメディアが多様化する中、持ち株会社の下で経営基盤を安定させ、将来にわたり良質な情報や豊かな娯楽を安定的に視聴者に提供し、地域社会に貢献するという社会的責務を果たしていく決断をした」と説明している。 ■再編に向けて徐々に整った下地 放送局をめぐっては、同一企業による複数局の支配を防ぐ「マスメディア集中排除原則」が定められていた。 だが、地上波デジタル放送の開始など多額の設備投資を迫られ、資金調達に苦しむ地方テレビ局が多かったことから2008年に放送法が改正された。それにより集中排除原則を緩和して資金調達能力の高い認定放送持ち株会社制度が導入された。