日本に最も影響を与えた音楽家!? フェルディナント・バイエルが残したもの【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
バイエル『ピアノ教則本』 日本に最も影響を与えた音楽家とは
今日7月25日は、ドイツの作曲家でピアニスト、フェルディナント・バイエル(1806~63)の誕生日です。 彼の最大の業績の1つが、1850年頃に著した『ピアノ奏法入門書』、いわゆる『バイエル・ピアノ教本』です。 日本のピアノ教育の主軸となって活用されてきた同教則本は、まさに永遠不滅のベストセラー。その浸透力を鑑みれば、“日本に最も影響を与えた音楽家はバッハやモーツァルトよりもむしろバイエルである”という奇抜な意見も腑に落ちます。 日本において決定的な地位を築き、世界各国の言葉で出版されてきた『バイエル・ピアノ教本』ではありますが、アメリカやヨーロッパにおいては少数派であることが興味深い事実です。その理由としては、右手がメロディで左手が伴奏、というパターンが多いことや、調性や奏法に偏りがあること、さらには、曲名の無い番号のみの連続によって、学習者のモチベーションが損なわれやすいことなどが指摘されているのだとか。 とはいえ、お世話になったことは間違いなし。ピアノを習ったことのある方にはきっと懐かしい音楽に耳を傾けてみるのはいかがでしょう。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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