前回の大噴火から、300年超の富士山…!なんと「噴出待ちのマグマ」は、東京ドーム240杯分
富士山の噴出率は?
富士山の噴出率を数字で表すと、3200年以前の噴出率は1000年あたり約2立方キロメートルだったが、ステージ4に入って以後は1000年あたり約1立方キロメートルとなっている。1立方キロメートルとは、1000メートル×1000メートル×1000メートルの立方体の体積であり、10億立方メートル(すなわち10の9乗立方メートル)に相当する。 富士山の1000年あたり1立方キロメートルという噴出率は、実はきわめて大きな数字である。 たとえば、雲仙普賢岳の1000年あたりの噴出率は、20分の1の0.05立方キロメートルにすぎない。また、古墳時代に噴火して巨大な溶岩ドームをつくった大分県の九重山でさえ、10分の1の0.1立方キロメートル程度なのだ。いかに富士山がマグマの噴出率が高い火山であるかがわかる。
噴出率から予測する「今後の噴火」
富士山の噴出率のデータから、今後の噴火について予測を立てることができる。富士山は1707年の宝永噴火以来、およそ300年間もマグマを噴出していない。この間も地下ではずっと1000年あたり約1立方キロメートルのペースでマグマが生産されているとすると、300年間では約0.3立方キロメートルのマグマが蓄積していることになる。 0.3立方キロメートルとは、雲仙普賢岳が1991年から4年半かけて出したマグマの3倍ほどの量になる。もしもこれだけのマグマが一気に噴出すると、宝永噴火のような大噴火になる。逆に少しずつ出れば、小規模な噴火が何十回にも分かれて長期間続くことになる。 過去の富士山噴火で一回に出たマグマの量を調べてみると、0.3立方キロメートル以上のマグマを出した大規模な噴火は、最近3000年間に7回ほど起こっている。その代表格は864年の貞観噴火(1.4立方キロメートル)と1707年の宝永噴火(0.7立方キロメートル)である。 それに対して、これよりも1桁小さな(0.03立方キロメートル程度の)中規模の噴火は、20回ほど起きている。また、さらに1桁小さな(0.003立方キロメートル程度の)小規模の噴火は、100回以上にもなる。 ここで大事なことは、大きな噴火ほど起こりにくく(頻度が低く)、小さなものほどしばしば起こる(頻度が高い)という事実である。これは地学現象に特徴的なことで、火山の噴火にも地震の発生にも当てはまる共通の性質なのである。すなわち富士山でも、大噴火はまれにしか発生せず、小噴火は比較的、頻繁に起きてきたといってもよい。 ここで、富士山が噴出したマグマの体積をより読者にも実感しやすいように、東京ドームでは何杯分になるか換算してみよう。