ゲームはメンタルヘルス改善や人生満足度向上に効果 日大などがコロナ禍生かして研究
しかし、「全国的な抽選で購入できるかがランダムに決まる」「いつもは参加しない人も母集団に加わる」ことから、自然環境の下でより現実に即した因果関係を示すことができると江上助教らは考えた。「この機会を逃せば、次の『ステイホーム』はいつ起こるか分からない」と、2020年11月には着手するというスピーディーな展開で研究を始めた。
目指すのは、2020年3月から継続していた「ニンテンドースイッチ」(任天堂)の抽選販売について、人々の記憶が薄れないうちにモニタリングを行うことだ。国内のある調査会社がスイッチや「プレイステーション 5(PS5)」(ソニーグループ)といったゲーム機市場について、定期的に顧客満足度などを測定するオンライン調査を行っていることが分かり、この企業と共同でオンライン調査を実施して抽選販売に関するデータを収集し、解析した。
2020~22年の3年間で、調査会社のもとに国内在住の10~60代の男女8192人のデータが集まった。8192人はスイッチとPS5のいずれか、もしくは両者の抽選に参加。内訳をみると、スイッチの抽選に参加したのは1773人で、数回の抽選の後、最終的に機器を獲得できたのは1098人、PS5の抽選には6419人が参加し、獲得できたのは1397人だった。8192人のうち3分の1以上が1日当たり1時間半以上ゲームをしていることが分かった。PS5獲得者中、1日3時間を超えてゲームをする人は約1割で、その他の人は3時間未満だった。
ゲーム機の所持 幸福度の向上やうつ抑制に寄与
この8192人を対象に、不安抑うつ評価尺度(K6)と呼ばれる、うつや不安障害をスクリーニングするために用いられている尺度と、人生満足度と呼ばれる、幸福度を測る指標を用いてアンケートをとった。すると、ゲーム機に当選し、ゲームを継続的にプレイしている人のほうが、落選した人より指標が良くなる傾向があった。 K6尺度の標準偏差を見ると、ゲーム機を持っていない家庭に比べ、スイッチが家庭にあると0.60ポイント、PS5では0.12ポイント、それぞれスコアが良かった。また、ゲームをプレイしない群と比較したところ、スイッチをプレイすると0.81ポイント、PS5では0.20ポイント、メンタルヘルスのスコアが良好になった。