日本のシングルマザーの貧困 豪州出身の監督が見た「豊かな日本で取り残された人々」
――日本で公開されてから、大きな反響があったそうですね。 皆さんの力がなかったら、一人では難しかったと思います。国内よりも海外の反応の方がすごくて、それがとても不思議だったんですけど、国内の反応も最近だいぶ良くなりました。映画館で上映中に泣いている人がいっぱいいて、それを見て自分も泣いちゃうぐらい、反応が良いです。 ――多くの国際映画祭に出品していますが、海外の人からはどのような反響がありましたか。 みんな、日本がこういう国だと思わなかった、意外だったと言います。20年以上日本にいる自分も取材をするまで知らなかったことです。 それまでは「日本はお金持ち」「みんな中流か、それ以上」と思っていました。日本はG7の国で、アフリカを援助して、武器もどんどん買っているグローバルリーダー。でも貧困が隠れていたんです。みんな衝撃を受けていました。たとえば、あなたの目の前にいる人だって、もしかしたら実はすごく困窮しているかもしれない。 取材を受けてくれた支援団体「ハートフルファミリー」理事の西田さんがいつも言っています。「子育てを追えて振り返ってみたらシングルマザーの悩みは20年以上変わっていなかった。何かできることがあるはず!」と。だから日本にはNPOがたくさんあります。国がやってくれないから自分たちでやるしかない、と。 ――次の作品について決めていますか。 決めています。「取り残された人々」の第2弾として、次は日本の子供たちの自殺問題を取り上げたいと思っています。 母子家庭のアパートの隣の人が、「子どもの声がうるさい」と壁を叩くという話を聞きました。子どもの声は本来、ハッピーなもののはずなのに、子どもに冷たい。日本では2022年は514人もの子どもが自殺したんです。またゼロからリサーチが始まるテーマですが、皆さんからどんな形でもいいので、ご協力を募り作りたいと思っています。
朝日新聞社