脱炭素か安定供給か、若者の望むエネルギーとは?~18歳意識調査アンケートより~
「良い点も悪い点も理解した上で、総合的にベストな判断を」
高木:学生たちがエネルギーについて考えるとき、現在は、情報が足りないというより、情報が多すぎると状態だと思います。 以前は、教科書などの書籍から知識を得ることが主流で、教科書や書籍には校正が入ることもあり、おおよそ同様の内容が記載されていました。しかし現在では、ネット、特にSNSを通じて、各地域、各団体がそれぞれの立場・意向に基づく情報を発信しています。 原子力発電や再生可能エネルギーは注目度の高いトピックですので、多様な情報が出がちのように思います。「再生可能エネルギーは地球にやさしい」、「原子力発電所は危険」といった記載はよく見受けられます。ただ、いろんな情報があって、信頼性も幅がありますし、発信者の意見が中心になっているものもあって、情報をどう精査するかなどの判断が難しくなっています。 加えて、エネルギーに限ったことではありませんが、インターネット上では、自分の関心に近い情報が入ってきやすい状況にあります。情報を見るとき、このことも念頭に置いておくことが重要です。生徒さんや学生さんにはこういったネット情報の注意点もお伝えすることが大切です。 もう一つ注意が必要なことがあります。数値データは、施策や方針とリンクしている場合があり、誘導したい文脈で数値データの定義が異なる場合があります。 日本のエネルギー自給率は低く、大部分のエネルギーが輸入されているということ自体は、日本の若者のほとんどに認知されているようです。ただ、その数値データは発電技術の国産性、原料の輸入率、発電能力や稼働率などで変動します。 数値データは定義などをしっかり見ることが大切になります。このあたりも学生さんには伝えるようにしています。 エネルギーへの考え方の違いがあるという点については、国レベルにまで広げて見てみた場合も同様です。先進国では持続可能性、環境と経済のバランスへの関心が高い傾向にあります。 外国のインターナショナルスクールなどでも授業を行う機会がありました。現在、経済を伸ばしている最中の国では、エネルギーは経済発展に必要という意識が強く、環境への配慮といった意識は低い傾向にあります。 日本は、外国と比べると、エネルギーを地球温暖化など環境問題との結びつけて考える傾向が強い傾向にあるよう思います。海外で戦争や紛争が起っても、欧州など他の地域と比べて直接的な影響が見えにくいことがあって、エネルギーの安定供給や経済との関わりは、諸外国の生徒・学生ほど、大きくは意識されにくいのかもしれません。 エネルギーについて教える中で注意していることがあります。すべてに万能な技術やエネルギーはありません。すべての技術やエネルギーは、長所と短所、言い換えると便益(ベネフィット)とリスクを伴います。 技術やエネルギーについて説明するときは、それぞれについて、良い点と悪い点を示し、子どもたちが自分で考えられるようになることを意識しています。これは年齢層に限らず行っていて、各技術のいいところや悪いところが何か、どんな技術をどのくらい増やすとよいかといったディスカッションも通して、考えを深めるように意識しています。 エネルギー環境学習に関しては、環境保全活動を行うNPOや教育・研究機関、電力会社、新聞社など、さまざまな方々と一緒に取り組んでいます。これらの方々などエネルギー教育活動に携わる人たちが共通して意識して実践していることが、エネルギーのベストミックスといった、長所と短所を混ぜて、便益とリスクのバランスに対する意識づけのように感じています。 いろんな方々と連携して、環境やエネルギーに関するリスクと便益をはかりにかけながら、エネルギーのベストミックスや、判断基準について子たち自ら考えることができるようになる、そういったことを目指して教育に取り組んでいます。