脱炭素か安定供給か、若者の望むエネルギーとは?~18歳意識調査アンケートより~
若者の原発に関する関心は一定程度あるものの、国内の現状や、安全性・経済面とのバランスなど様々な情報を十分に考慮した上で、今後の国内のエネルギーに対する意見を持つことができていると言えるのでしょうか。 岩手大学理工学部教授の高木浩一(たかき・こういち)先生に聞いてみました。高木先生は、岩手県内を中心として、学校や電力会社、NPOと連携してエネルギー・環境教育に長年取り組んでこられ、年間35回ほど小中学校で授業を開催しておられます。
「学生たちが共通して持っているのは、既存のエネルギーが底をつくという危機感」
高木さん(以下、敬称略):現在の生徒さんたちは、学校で地球温暖化などの環境問題について学習しています。小学生は、「地球温暖化など環境問題にはエネルギーについて考えることが大切」という意識を持ちます。中学生はSDGsの枠組みで環境やエネルギーについて考える機会が多く、S+3E(※)なども意識します。 大学生は、小中高校までで習ったことをベースとして、環境やエネルギーに関心を持つ学生であれば、政策や規制を通して新しいエネルギーの導入や地球環境への対応そのものをどうしていくかといった社会的なしくみの面にも興味を持ちます。特に理系の学生さんは、エネルギー資源をより効率良く使い、資源をより長持ちさせるにはどうすればいいかといった技術的な貢献の面にも関心を持っているようです。 学生全体で共通の意識として、化石燃料がいずれ底をつくという意識があり、この意識は過去に比べて上がっているかもしれません。原子力発電に関しても、若い世代では、エネルギー供給の手段の一つとして考える傾向が強く、これまでの世代が持っていた原子力発電を特別視した抵抗感のようなものはそれほど強くない印象を受けています。 近年の日本において、二つの大きな電力危機がありました。一つは、2011年の東日本大震災時の3.11ショックです。福島第一原発事故で日本のすべての原子力発電が止まったことで、「総量としてのエネルギーが足りるか」が問題になりました。東日本大震災の前後で、原子力発電をどう安定に保っていくかという点への関心は、若い世代に限らず国内全体で高まったと思います。 それまで原子力発電については、安全性への信頼派と懐疑派に大きく分かれていた印象でした。3.11を機に、二極化からスペクトル化へシフトして、運用に対する議論などが進んだように感じます。 もう一つは、2022年に首都圏での電力受給逼迫警報とそれに伴い節電要請がなされた3.22ショックです。エネルギー需要が高まる時間帯への対応が深刻な問題となり、同時同量の重要性が改めて認識されました。 地球環境やSDGsと関連した学習や、大きな電力危機の経験もあり、最近の学生たちの意識として、エネルギーが足りなくなる懸念やこのままでは地球がもたなくなる危機感、その対策としての使い方や新しい発電方法への関心は強くなっているように感じます。 ※安全性(Safety)を大前提として、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に実現する考え方