中学受験で「文系の親」が陥りがちな失敗とは? 大卒だから起こる勉強への誤解
親は勉強を教えてはいけない
そしてここが大事なことですが、「勉強そのもの」はお父さんもお母さんも教える必要はありません。というより、親は受験勉強を直接教えないほうがいいのです。それは、現在の中学入試問題が非常に難しくなってきており、昔ながらの勉強法ではとても解けないものが多いからです。 中学受験を考えるご家庭は両親ともに大卒というケースが多く、いわゆる文系であることも多いのですが、そうすると陥りがちなのが「頑張ればできるはず」という姿勢。 長い時間勉強して暗記学習に取り組む受験勉強をした、悪い言葉でいうとガリ勉タイプの人は、たとえば子どもが塾で成績が伸び悩んでいるような場合、「頑張れば大丈夫」「もう少勉強時間を増やしてみたら」というようなことを言いがちです。すると、子どもの成績は勉強すればするほど下がってしまうことがあります。 こういう場合にすべきなのは、本来は勉強量を減らし、本当にやるべきこと、今やらなくてもいいことを見直すことですが、逆にもっと頑張らせてしまうのです。これを続けると、子どもは「とにかくたくさん問題をやればいい」という大量演習型の学習や、暗記学習ばかりをするようになってしまいます。
文系の親・理系の親が陥りがちな失敗
ひと昔前の受験勉強といえば暗記が主流で、特に文系科目はひたすら暗記をすればかなりの点数がとれました。英語、古典、漢文はほぼ暗記がメイン。そして最も暗記に頼っていたであろう科目が日本史、世界史です。それが文系の親の印象に強く残っているのです。暗記を頑張ったから今の自分がある、と自負している人も多いでしょう。 現在も社会科だけは暗記しなくてはいけない項目が非常に多く、入試科目に社会が含まれることが多い関東の子どもたちは、「社会で点数を稼ごう」と、せっせと暗記します。するとある程度点数も伸びるので、ついほかの科目も「暗記型」の学習に頼ろうとしますが、結果的に全体の伸び悩みの大きな理由につながります。 私はこれを便宜的に「社会科脳」と呼んでいますが、文系の親にはこのタイプが多いのです。理科も暗記でなんとかなる、算数は問題をたくさんやればいい、国語は本をたくさん読んでいる子なら解ける、という風に考えてしまう。 むしろ入試で求められるのは「理系脳」です。といっても、理科と算数ができることが「理系脳」ではありません。公式を暗記するのではなく、その本質的な意味を理解して、初めて見るタイプの問題でも過去のプロセスや解法を組み合わせ、「今何がわかっているのか」を整理し、「どの考え方を使えば解けそうか」ということを予測して、実行し、さらにチェックできる「思考法」のことです。 この理系脳は、算数や理科ばかりではなく国語の問題を解くときにも必要。読解力、心理描写の理解にも、こうした論理的な思考が大切なのです。逆に言えば、国語の論理的な読解力があってはじめて、算数・理科・社会の問題を深く理解できます。 理系の親御さんにも気をつけておいていただきたいのは、前述したとおり「算数や理科は自分で教えられる」と考えないということ。最近の入試問題を見ていただいた通り、中学受験レベルでもお父さんお母さんが知らない知識、解法が無限にあり、プロの塾講師でさえ手こずるものが数多くあるのです。 実際の学習テクニックについては塾の先生にまかせて、自宅での「復習」をフォローしてあげるのが一番だということです。
西村則康(「名門指導会」代表)