年金繰り下げは「後悔する」といわれる理由 年金額の違いと税金への影響とは
3.年金繰り下げでもらえる年金額をシミュレーション
繰り下げ受給の試算、税金や社会保険料の負担などについて説明します。 (1)80歳までに亡くなるなら「60歳繰り上げ」の受給総額が最も大きい 想定寿命までの受給総額が一目で分かるよう、本来の(65歳受給開始の場合の)年金見込み額を100万円と仮定し、繰り上げ受給を含めて5年刻みの表にしてみます。ちなみに本来の年金見込み額100万円は、老齢基礎年金80万円程度 + 老齢厚生年金20万円程度を想定した額です。 【見込み額】 (60歳開始)繰り上げ受給 76万円 (65歳開始)本来 100万円 (70歳開始)繰り下げ受給 142万円 (75歳開始)繰り下げ受給 184万円 【75歳になるまでの総額】 (60歳開始)(15年分) 1,140万円 (65歳開始)(10年分) 1,000万円 (70歳開始)(5年分) 710万円 (75歳開始) - 【80歳になるまでの総額】 (60歳開始)(20年分) 1,520万円 (65歳開始)(15年分) 1,500万円 (70歳開始)(10年分) 1,420万円 (75歳開始)(5年分) 920万円 【85歳になるまでの総額】 (60歳開始)(25年分) 1,900万円 (65歳開始)(20年分) 2,000万円 (70歳開始)(15年分) 2,130万円 (75歳開始)(10年分) 1,840万円 【90歳になるまでの総額】 (60歳開始)(30年分) 2,280万円 (65歳開始)(25年分) 2,500万円 (70歳開始)(20年分) 2,840万円 (75歳開始)(15年分) 2,760万円 【95歳になるまでの総額】 (60歳開始)(35年分) 2,660万円 (65歳開始)(30年分) 3,000万円 (70歳開始)(25年分) 3,550万円 (75歳開始)(20年分) 3,680万円 【100歳になるまでの総額】 (60歳開始)(40年分) 3,040万円 (65歳開始)(35年分) 3,500万円 (70歳開始)(30年分) 4,260万円 (75歳開始)(25年分) 4,600万円 80歳までに亡くなるとしたら「60歳繰り上げ」の受給総額が最も大きくなります。一方で、結果として長生きとなった場合に資産が途中で枯渇し、老後破綻してしまうことは避けたいものです。公的な老齢年金は「長生きによる資産枯渇リスクに備える保険」です。 (2)「繰り下げ受給開始年齢 + 12」の年齢で本来の受給総額を上回る 次に、本来の年金見込み額を同じく100万円とし、繰り下げると本来の受給総額を上回るのに何年かかるか?(繰り下げ後、何年受給すれば本来の受給総額を超えるか?)を確認してみましょう。 「66歳受給開始(繰り下げ月数12)、77歳直前で死亡(11年間受給)」の想定です。 ●増額率 = 繰り下げ月数12 × 0.7% = 8.4% ●繰り下げ後の見込み額は108万4,000円 ●受給総額 = 108万4,000円 × 11年 = 1,192万4,000円 本来の受給総額は100万円×12年 = 1,200万円なので、繰り下げ後11年間受給の場合、本来の受給総額にはわずかに届きません。 死亡を1年遅らせ、12年間受給としたらどうなるでしょうか。 「66歳受給開始(繰り下げ月数12)、78歳直前で死亡(12年間受給)」の想定です。 ●受給総額 = 108万4,000円 × 12年 = 1,300万8,000円 本来の受給総額は100万円 × 13年 = 1,300万円なので、繰り下げ後12年間受給すると、本来の受給総額をわずかに超えることが確認できました。 1年未満の月数を丸めると、「『繰り下げ受給開始年齢 + 12』の年齢で本来の受給総額を上回る」といえます。例えば68歳で繰り下げ受給を開始する場合、12を足して、80歳になったとき、繰り下げなかった場合の本来の受給総額を上回ります。