「もうやってらんねぇよ!」徳本一善ら後輩の突き上げに…24年前の箱根駅伝 伝説の“三つ巴の5区”のウラにあった法大主将の「ブチ切れ秘話」
青学大の8度目となる優勝で幕を閉じた101回目の箱根駅伝。その往路の主役は中大だった。トップで5区の山中を駆ける白地に赤の「C」を見て、藤原正和監督の現役時代を思い出したファンも多かったのではないだろうか? 遡ること24年前、伝説の“3つ巴の5区”――先頭を行く法大・大村一(4年)を、後ろから順大・奥田真一郎(3年)と中大・藤原正和(2年)が追いかけ、箱根山中で激突した歴代屈指の名勝負だ。この時、3人の争いが最後まで縺れた理由は、実力的に「格下」だったはずの大村が、学生トップ級の2人を相手に予想外の奮闘を見せたことが大きかった。山中で吹き荒れた強風ともあいまって起こった波乱の主役の胸中とは。《NumberWebノンフィクション全3回の2回目/つづきを読む》 【変わりすぎ写真】「こ、これ…同じ人?」ヒゲにサングラス“超強面”だった法大時代の大村さんと46歳・市役所勤務の現在…「超トガってる」中大・藤原監督の現役時代や、箱根駅伝レジェンドギャラリーも見る 「もうやってらんねぇよ! 俺は辞める」 法大4年生だった大村一は2000年の春、関東インカレの会場だった国立競技場の裏でチームメイトたちを前に、そう叫んでいた。 この年、大村はチームの駅伝主将に任命されていた。 当時の法大はこの時代にしては珍しく、指導者によるガチガチの管理指導ではない、良くも悪くも個人のカラーの強いチームだった。一歩間違えれば「チャラチャラしている」と批判が飛んでくるような自由主義のチームにおいて、性格的にも生真面目だった大村は貴重な“主将キャラ”でもあった。 「監督から言われたとかでもなくて、なんとなく4年生で集まって『キャプテンは大村だよね』と。僕自身も多分、自分がやるんだろうなぁとは思っていました」 下級生の頃からすでに箱根駅伝も2回走っており、実力的にも申し分ない。主将への就任は必然でもあった。
下級生に「タレント揃い」だった法大
一方で、この頃の法大は下級生に強力なランナーが揃っていた。 ルーキーには前年の高校総体3000m障害で優勝した黒田将由(現在、青学大でエースとして活躍する黒田朝日の父)が入学し、3年生にはチームの大黒柱でもある徳本一善(現駿河台大監督)が在籍していた。結果的に大村たちの代はいわゆる「谷間の世代」として扱われることも多かった。 「陸上はタイムで実力が顕著に出ますから、下級生からの突き上げはめちゃくちゃありました。練習でも『もっと引っ張ってくださいよ』という下級生たちの雰囲気を感じる瞬間は何度もありました」 中でも徳本はチーム内でも異質な存在感を放っていたという。 学生界でも屈指のエースだっただけでなく、当時は珍しかった派手な金髪や奇抜なファッション、歯に衣着せぬ発言も話題を呼んでいた。それでいて練習では、それでも周囲に有無を言わせないストイックさがあった。 「タダ飯食いに来てんじゃねえぞ!」 合宿でケアを怠って早々に故障した4年生が、徳本にそんな叱咤を受けたこともあったという。 ただでさえ名門大の駅伝チームというのは、重圧が大きい。なかでも主将となればその風当たりは想像を絶するものがある。最大の目標である箱根駅伝に向け今年のチームをどう導くのか。しかも下級生には、良くも悪くもメディアの注目を集める徳本という存在もいる。結果が出なければ、「最上級生が不甲斐ないからではないか」という声が容赦なく飛んでくるのは目に見えていた。 そんな周囲からのプレッシャーや、有力選手ひしめく後輩からの突き上げに加え、大村は短距離も含めた部全体の主務も兼任していた。そこに就職活動と教育実習の準備という競技外のタスクまで重なり、ついに大村はキャパシティーを超えた。
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