なぜNTTデータ関西がスポーツビジネスに参入するのか? 社会課題解決に向けて新規事業「GOATUS」立ち上げに込めた想い
「GOATUS」が目指す“Greatest Of All Time with US”
――コロナ禍以降の新たな地域課題に対応する必要性があり、その役割の一端をスポーツが担える可能性があったということでしょうか。その中で、「GOATUS」というプロジェクトが具体化していったのですね。 山下:はい。「スマートシティ」をもじり、「スポーツシティ」としてプロジェクトを開始しました。しかし正直なところ、最初はほとんど形のない単なるアイデアでした。スポーツ庁を始め、産官学さまざまな方々とのディスカッションやヒアリングを重ねてたどり着いたのは、「甲子園球場のデジタルプラットフォーム版」というビジネスイメージでした。 グラウンドでは、野球、サッカーなどのメジャースポーツからマイナースポーツまで、さまざまなスポーツ選手が夢に向かって活動しています。観客席からは、ファンがエールを送り支える。そして、甲子園球場の看板のように、チームや選手を応援してくれる企業が並ぶ……。これをデジタルプラットフォーム上に作り上げようと考えました。 ――このビジネスモデルにたどり着くまでに、最も大きかった「気づき」はなんだったのでしょうか。 山下:「アスリート」「ファン」「スポーツチーム」の3者が、それぞれに抱えている課題に気づけたことが大きかったと思います。 スポーツ業界の方とお話しする中で、スポーツで生計を立てられるアスリートはごく一握りであること、それ以外のアスリートは資金が足りずに夢を諦め、競技をやめてしまうという現実を知りました。また、個人SNSに向けられた誹謗中傷に悩むアスリートも多くいます。 一方、コロナ禍でファンの「応援の仕方」が制限されました。例えば、フィギュアスケートで演技が終わった後にリンクに花やぬいぐるみを投げ入れることができなくなり、ファンも、「応援したいのにできない」というフラストレーションを抱えていたのです。 また、スポーツチームは資金難や人材不足から、「広報」になかなか労力を割けていません。また、「広報活動がどれだけ収益につながっているか」を可視化することに難しさを感じていました。 このように3者の課題を同時に解決する方法を考え、辿り着いたのがコミュニティプラットフォーム「GOATUS」でした。 ――「GOATUS」という名前には、どのような意味が込められているのですか? 山下:「GOATUS」は、「Greatest Of All Time with US(最高の瞬間をともに)」という言葉に由来しています。私たちは、「GOATUS」を通じて、アスリートとファンの夢をともに叶えることを目標としています。このプラットフォームでは、チームの公式アカウントや、アスリート個人が自分の目標や夢を発信するアカウントを持つことができ、それに共感したファンが応援でき、ファンが撮影した写真をチームやアスリートが公式ページでシェアできる仕組みを提供しています。 「アスリートとファンの夢をともに叶える」ことを一番の軸としているので、ファンからのギフティング(エール)は最大9割以上を応援金として当社からアスリートにお支払いし、アスリートが新たな挑戦に踏み出しやすい環境を作ります。この点は、他のギフティングサービスと一線を画すポイントだと思います。