「うまくやってよ」のしわ寄せで長時間労働――トラックドライバーに一晩密着。「働き方改革」は可能か
2024年問題に対しては、国土交通省は2020年に「標準的な運賃」を設定し、荷主に周知と活用の働きかけを行ってきた。全日本トラック協会担当者は「運送事業者は、働き方改革に対応するため、『標準的な運賃』に基づいて自社の原価を把握し、荷主と交渉する必要があるが、交渉していない事業者も多い」と話す。 「要因の一つは『荷主への配慮』でしょう。今、荷主もコロナ禍で苦しく、交渉できる状況ではないと踏み込めずにいる事業者も多いのが現状です。値上げ交渉の場で、逆に値下げを求められたり、他社に仕事を取られたりするなどのリスクを回避するために話題にあげない会社もあるようです」 しかし、労働環境を改善するために「荷主の協力」が不可欠であることは間違いない。 「荷主には、荷待ちや付帯作業に人手と費用が発生するという認識、意識を正しく持ち、適正な運賃を順守してもらわないといけないと思っています」(国交省職員)
430を順守したり、深夜割引の適用時間を待ったりすると、荷主の指定時間に間に合わないケースもある。こうした休憩ルールや道路事情があることを知ってか知らずか、ドライバーは現場でこんな言葉をかけられると伊藤さんは言う。 「うまくやってよ」 今後の物流業界では、どれだけ荷主にこの言葉を言わせないかが課題になるだろう。
「ドライバーなんか待たせておけばいい」
法律の矛盾や過酷な作業など、しわ寄せを受けるのは現場のトラックドライバーだ。 「職業に貴賤はないってよく言われますけど、格差は確実に存在しています」(伊藤さん) 伊藤さんは、「ドライバーなんか待たせておけばいい」「手伝う必要なんかない、ドライバーにやらせとけ」などという荷主の声を聞いてきたという。 トラックドライバーは、コロナ禍でその存在をようやく認識されるようになった。しかし、顧客至上主義のもと「送料無料」という言葉で彼らはいまだに「ないもの」として扱われている。いつまでも改善しない労働環境や世間からの無理解に、彼らからはこんな声が聞こえてくる。 「何がエッセンシャルワーカーだ」