「うまくやってよ」のしわ寄せで長時間労働――トラックドライバーに一晩密着。「働き方改革」は可能か
働き方改革関連法の施行以降は、トラックドライバーの収入減少も危惧されている。給与形態の多くが、走った分だけ手当の付く、いわゆる歩合制だからだ。賃金水準が上がらないまま労働時間に上限が設けられれば、ドライバーの給料が減少することは間違いない。2024年を境に、生活が成り立たなくなるドライバーが仕事をやめ、人手不足に拍車がかかる可能性がある。 「トラックドライバーは手当で食ってるんですよ。賃上げは絶対必要ですね」(伊藤さん) 全日本トラック協会の資料「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」によると、現在、トラックドライバーの労働時間は全産業平均より約2割長いが、給料は全産業平均より大型ドライバーの給料で5%、中小型ドライバーで12%低い。先の見えない燃料高騰に直面するなか、ドライバーに対する賃上げの声は聞こえてこない。
労働環境の改善には「荷主の協力」が不可欠
こうした現状に対し、国土交通省はどのような対策をとっているのだろうか。同省の職員はこう話す。 「深夜割引に関しては、不要な深夜労働を助長し、ドライバーの働き方に影響を与えている可能性もあると思います。国交省の社会資本整備審議会の中で割引のあり方を議論していて、有識者から割引時間帯を現行の0~4時から22~5時に拡大し、その時間内に走行した距離の分だけを割引の対象にすべきだとの意見が出ている」 しかし、「距離制」の割引案は、多くの運送関係者からすでに「高速料金の負担増になるのでは」と懸念の声があがっている。これについて国交省の職員に尋ねると、こう答えた。 「高速料金は、荷主が支払うようにするべきだと思っています。国土交通省で定めた標準的な運賃では、実費を支払うことを定めている。ただ、運賃がどんぶり勘定だと、荷主が高速料金を払っても実際は高速道路を使わず、下道を使うというケースも起きていると聞いています。今後は料金体制の仕組みを荷主が運送側と協力して作っていく必要があるでしょう」