【特集】「心臓病の子どもを救いたい」小説『下町ロケット ガウディ計画』が現実に!モデルとなったメーカーと医師、異色の開発チームの挑戦 業界の“タブー”を破る発想の転換でたどり着いた、小児医療の新たな可能性
行き詰った時に、根本医師を勇気づける、ある言葉があります。 (根本医師) 「『成功とは失敗を重ねても、やる気を失わないでいられる才能である』。失敗だ、とにかくやれ、失敗だ、やれ…とやってる間に成功に行くこともあるよね。しょっちゅうこの言葉を見てるわけじゃないよ。なんかうまくいかないことなんて山ほどあるじゃん。そういう時に目に飛び込むようにしてる」
成功への道のりは長く、壁は高い。それでも救いを待つ子どもはたくさんいます。子どもから送られた手紙に描かれた似顔絵をみながら根本医師は話します。「こんな感じでお子さん本人から(手紙が)来るというのは面白いよね」。
「シンフォリウム」の開発を支えた会社が他にもあります。化学メーカー大手の「帝人」です。帝人の担当者・松尾千穂子さんを根本医師はこう評します。 (根本医師) 「(松尾さんは)どこにでも行くんだよ。アメリカの中でもトップの人、ほぼ全世界のトップに直談判に行って『この人に会ってきました』って。写真見せてもらったんだけど、『俺らでもこの人喋れないのに』って言う人に、そこら辺の椅子に座って喋ってるの、しゃがんで」 帝人は、開発が実用化した後の収益を確保するため、販路を広げようと世界各地でシンフォリウムの可能性をアピールしました。日本の市場だけではビジネスが成り立たないからです。シンフォリウムが成功例となれば、遅れている子ども用の医療機器開発を後押しする“道しるべ”になるとも信じていました。
「業界ではこんな作り方タブーだよね」発想の転換で、ついにたどり着いた成功
そして、臨床試験が始まった2019年。開発チームは発想の転換から成功にたどり着きました。 (開発メンバー 山田さん) 「業界ではこんな作り方タブーだよね、というやり方なんですよ。『これを逆にこうしたほうが、ちょっとそういう伸びるのができるのではないか?』というので始めたのがきっかけなんです」 シンフォリウムは2種類の糸で編まれた生地です。1つは体内に吸収されてなくなり、もう1つは、吸収されずに残って2倍ほどの大きさに伸びる仕組みです。心臓の組織になじみながら、体が成長するのに合わせて伸びて広がるため、パッチ交換のための手術の回数は少なくなります。臨床試験を経て、2023年7月、シンフォリウムの製造・販売が国に承認されました。
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