特別展「はにわ」(東京国立博物館)レポート。5体の「挂甲の武人」が史上初めて一堂に
笑う埴輪や、動物埴輪大集合
埴輪は複数の人物や動物などを組み合わせて、様々な物語場面を表現した。第5章「物語をつたえる埴輪」では、その埴輪群像を「はたらく」「すまう」といった役割ごとに紹介する。 口をへの字に曲げたり、笑っているような表情を浮かべたりしている埴輪は、盾の上に人の顔が造形された盾持人埴輪。手足は表現されておらず、その独特の表情で悪しきものを古墳に寄せ付けないためのガードマンのような存在だ。その横には、少しふくよかな姿をした力士の埴輪が並ぶ。多様な建築様式で作られた家形埴輪や、大きな導水施設形埴輪は、当時の権力者たちの住環境を伝えている。 最後の展示室には愛らしい姿の動物埴輪が大集合。飾り馬や小馬、牛、鹿、鶏など、王の儀礼と関連して作られたものや、自然の動物をそのまま写しとったものなど、それぞれに役割が異なった動物埴輪たちがダイナミックに展示されている。 さらにエピローグとして、木版画家・斎藤清の作品のモチーフになった埴輪や、俳優の三船敏郎が手にした埴輪、埴輪の総選挙「群馬HANI-1グランプリ」でグランプリに選ばれた《埴輪 笑う男子》 など、明治から現代までの埴輪の受容を紹介し、本展は幕を閉じる。 東京国立博物館では約50年ぶりの埴輪展であり、兄弟のような5体の「挂甲の武人」が史上初めて一堂に会する本展。河野研究員は「これだけの作品が揃うことは、おそらく私が生きているうちでは難しいんじゃないかと思っている」と話す。東京国立近代美術館で12月22日まで開催されている「ハニワと土偶の近代」展とあわせて、多様な埴輪の表現を体感してほしい。
後藤美波