特別展「はにわ」(東京国立博物館)レポート。5体の「挂甲の武人」が史上初めて一堂に
すべて国宝の副葬品
第1章「王の登場」は展示室の展示品すべてが国宝のみで構成されるという贅沢なエリア。 埴輪は王などの権力者の墓である古墳に立てられた。古墳からは豪華な副葬品が出土することがあり、副葬品は王の役割の変化とともに時代に沿って移り変わっていった。また、中国大陸や朝鮮半島との関係を示す国際色豊かな副葬品も存在している。 ここでは、王が司祭者的な役割をしていた古墳時代前期の4世紀後半に築造された前方後円墳・東大寺山古墳から出土した、柄頭を装着した金象嵌銘太刀や、王の武人的な性格が強まった5世紀、朝鮮半島からもたらされた豪華な金製の耳飾り、ヤマト王権の中央集権的な性格が強まった6世紀の出土品で、王の権威を誇示するかのような、きらびやかな装身具などを展示。埴輪とともに古墳に埋葬された副葬品を通して、埴輪が作られていた各時代の背景を知ることができる。
大王の墓のために最高水準で作られた埴輪
つづく展示室に進んで行くと、人の身長を超える巨大な円筒埴輪と出会う。第2章「大王の埴輪」では、古墳時代前期から古墳文化の中心地として栄えた奈良盆地や、倭の五王の陵として知られる大阪百舌鳥・古市古墳群、継体大王の墓とされる今城塚古墳など、古墳時代にヤマト王権を統治していた大王の墓に、当時の最高水準で作られた埴輪を時期別に紹介する。 巨大な円筒埴輪は奈良のメスリ山古墳から出土したもの。242mという高さにも圧倒されるが、薄さは2mmほどしかなく、その高い技術力にも驚かされる。 さらに壁沿いには大阪の大仙陵古墳から出土した埴輪を展示。女子の頭部や、馬形埴輪、犬形埴輪、3万本が立てられていたという円筒埴輪など、素朴ながら表現力を感じさせる埴輪が並んでいる。 そして青い展示壁を背景に並べられた4つの埴輪はいずれも古墳時代後期、6世紀に作られた今城塚古墳の出土品。武人埴輪はいまにも刀を抜こうとしている姿が印象的だ。開放的かつ豪華な作りの家形埴輪はまさに大王の神殿。高さ171cmの日本最大の家形埴輪とされる。