なぜ 南雲克明 は消費者に感動を生むインサイトを掴めるのか? トリドールで実現した「感性」と「データ」の融合
2023年度の売上収益が前期比23.2%増の2319億5200万円と過去最高を記録したトリドールホールディングス。丸亀製麺を筆頭に好調が続く背景には「KANDO(感動)ドリブンマーケティング」戦略がある。 なぜ 南雲克明 は消費者に感動を生むインサイトを掴めるのか? トリドールで実現した「感性」と「データ」の融合 企業の成長につながった施策や事業を切り口に、そこに秘めたマーケターの想いや思考を追っていくDIGIDAY[日本版]のインタビューシリーズ「look inside!─マーケターの思考をのぞく─」。 立て役者であるトリドールホールディングス執行役員CMO兼KANDOコミュニケーション本部長の南雲克明氏は「KANDO(感動)を中心に据えた4象限のスパイラルアップが鍵だ」と話した。 ◆ ◆ ◆
「感動」を意思決定の真ん中に
DIGIDAY編集部(以下、DD):トリドールホールディングスのマーケティング戦略は、多くのマーケターに注目されています。まずは「KANDO(感動)ドリブンマーケティング」とは何か、教えてください。 南雲克明(以下、南雲):「感動」をつくることを意思決定の真ん中に置き、それを中心にマーケティングを組み立てるというものです。具体的には「ブランドバリュー」「CX」「EX」「ソーシャルグッド」の4つを、感動創造の中心においてスパイラルアップさせるマーケティングです。これを「丸亀スパイラルモデル」と名付けました。 なかでも特に重要なのはCXです。たとえば丸亀製麺は現在約850店舗ありますが、この春、全店舗に麺職人を置きました。数年前まで200名ほどしかいなかった麺職人を1632名(2024年3月時点)まで増やし、独自の体験価値である「丸亀製麺は、一軒一軒が製麺所」「丸亀製麺にはすべての店に麺職人がいる」というメッセージをことしのブランドコミュニケーションの中核に据えています。 丸亀製麺では毎日、お店で麺職人たちが粉からうどんをつくっています。「おいしい」「すごい」といったお客さまの反応は、麺職人や従業員のEX向上にもなり、もっと美味しいうどんを提供したいという想いが生まれ、さらにCXが向上します。その積み重ねでブランドバリューも上がるというスパイラルを生みます。 さらに麺職人たちを中心に地域の子どもを対象に「こどもうどん教室」を全国各地で開催するなど、ソーシャルグッドへの取り組みも意識しています。これらのすべてが「感動体験」がお客さまを創造する源泉価値であるという思想から生まれているのです。 南雲 克明/トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼 丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長。早稲田大学大学院商学研究科卒MBA。コナミスポーツ、サザビーリーグなどBtoCの事業会社においてさまざまなブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年トリドールホールディングス入社。2022年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、感性とデータ両側面から持続的に選ばれる確率を高める「感動ドリブンマーケティング」を推進。ビジネスと企業価値をグロースさせ続けるマーケティングの革新と拡張に取り組む。うどんはもちろん、パスタ・ラーメン・そばなど年間300食以上を食べるほどの大の麺好き。主食は麺といっても過言ではない。
【関連記事】
- カンロ2024年度中間決算、売上高は前年同期比8.9%増の155億円超に。コミュニティサイト「Kanro POCKeT ×」で顧客とのつながりを強化
- 新世代クリエイターと組み、 クリエイタービジネス 事業を推進。大丸松坂屋百貨店・岡﨑路易氏に聞く、百貨店の近未来
- 味の素はなぜ「おいしさ」を消費者に伝えられるのか? クリエイティブを支える、科学的コミュニケーション思考
- 「Weird(奇妙)な時代」をどう切り抜けるのか。Modern Retail編集長ケイル・ワイスマンが語る、米小売業界が変革のためにするべきこと
- BIPOC支援のフィアレスファンドが提訴される。DEIに関してブランドと小売企業が知っておくべきこと