「レプリコンワクチンはシェディングを引き起こす......」。なぜ根拠のないトンデモ説は信じられてしまうのか? 免疫学の第一人者が解説
■「レプリコンワクチン」と従来型mRNAワクチンの違いは? ──世界に先駆けて日本で認可され、今年10月から接種が始まった新しいタイプのワクチン「レプリコンワクチン」について、反対の声や心配する声も上がっています。 宮坂 ファイザーとモデルナが開発した従来のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは、簡単に言うと新型コロナウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」と呼ばれる部分の情報が入ったmRNAを油の膜でくるんだものです、これを注射すると、体内でmRNAからスパイクたんぱく質が一定期間だけ作られ、この間にスパイクタンパク質に対する中和抗体ができて感染が抑えられ、さらにT細胞が活性化されて細胞性免疫が働くことにより重症化が抑えられる、という仕組みでした。 一方、新たに開発された「レプリコンワクチン」は、同じく新型コロナのスパイクたんぱく質を作り出すmRNAを利用するのですが、体内で作られたスパイクたんぱく質が短時間で消えずに、一定期間、作られるというのが特徴で、それによって新型コロナに対する免疫反応を従来のmRNAワクチンより長続きさせようとするものです。 レプリコンワクチンの認可に際しては、ベトナムで2万人近くを対象とした大規模なランダム化臨床試験が行なわれ、その有効性や安全性が確認されています。また、従来のmRNAワクチンと同様に、遺伝子情報によって体内で作り出されるのはウイルス粒子ではなく、その目印となるスパイクたんぱく質なので、それ自体が感染を引き起こすことはありません。また、ほかのウイルスと混ざって新しいウイルスができる可能性もなく、ましてや、それが接種者からシェディング(排出)されてほかの人に感染を引き起こすということもありません。 ただし、従来のmRNAワクチンでは短時間で消えてしまうスパイクたんぱく質が、レプリコンワクチンの場合は体内で一定期間増えるので、これがどのぐらい増えるのか? またそれがどの程度の期間続くのかという点については、まだはっきりとわかっていません。 たとえ抗体がこれまでよりも長く作られたとしても、その間にウイルスは変異していくので、中和抗体の効果が落ちてしまう可能性も考えられます。 では重症化予防効果はどうなのか?これについてはまだわかっていません。また安全性の確認にはもっと大きな母集団に対して使ってみることが必要で、現時点で絶対に大丈夫だと言い切れるだけのデータはまだ出ていません。