「レプリコンワクチンはシェディングを引き起こす......」。なぜ根拠のないトンデモ説は信じられてしまうのか? 免疫学の第一人者が解説
一方、現時点では、ファイザーとモデルナのmRNAワクチン、ノババックスの組み換えたんぱくワクチン、そしてレプリコンワクチンと5種類のものがあり、どのワクチンを受けるのか選べるのですから、ここは冷静に考えたらいいのではないでしょうか。心配であれば、あえてレプリコンワクチンを選ばずに、すでに安全性が明らかになっている従来のmRNAワクチンを選べばいいだけの話です。 ちなみに、最近ではレプリコンワクチンを接種した人から、何か悪いものが出て、ワクチンを接種していない人の健康を脅かすという「シェディング」なる言葉が広まって、世の中にいろいろな影響を及ぼしているようです。 先に述べたようにmRNAワクチンやレプリコンワクチンから感染性のものが出来ることはありません。そんなものは出来ないようにさまざまな工夫がなされています。そのようなことが理解できれば、シェディングなどという話はそもそも出てこないはずです。 このように、まったく根拠のないトンデモ説が、まことしやかに信じられてしまうのも、私たちの健康を支えている免疫やワクチンに関する正しい理解と、そのために必要な最低限の科学的リテラシーが十分ではないからです。本書がそうした誤解を防ぐ一助になってくれればと思います。 ●宮坂昌之(みやさか・まさゆき) 大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授、大阪大学名誉教授。1947年、長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同大学大学院医学系研究科教授を歴任。日本免疫学会元会長(2007年から08年)。著書に『ウイルスはそこにいる』(共著・講談社現代新書)などがある。 ■『あなたの健康は免疫でできている』インターナショナル新書 1045円(税込) わたしたちの健康を守っている「免疫」。しかし、その仕組みや働きについて、きちんと理解しているだろうか? 本書は、免疫学の第一人者が、誰もが知りたい「免疫のきほん」を、50のQ&A形式でわかりやすく解説。免疫が働きすぎるとどうなる? 病原体を記憶する免疫細胞とは? 免疫はがんに効く? などさまざまな問いに、最新の知見を交えて答える。健康に役に立つリテラシーと、免疫の新常識が身に付く入門書! インタビュー・構成/川喜田 研 写真/PIXTA