77%が入学定員割れの女子大学! 人気下落の5つの理由とそれでも女子大学を選ぶメリットは?
女子大学の経営が厳しい理由(3)実学・理系志向の高まり
下表は、2014年度と2023年度の大学入学者数の差異を学問系統別に示したものです。これによると、文学・史学・哲学といった人文科学系統、家政学系統、教育学系統の入学者が減少し、経済・経営・商学・法学といった社会学系統に加え、理学系統、工学系統、農学系統、医・歯・薬を含む保健系統の入学者が増加傾向にあり、近年の大学生は「実学・理系」志向といえます。特に女子学生に、この傾向は顕著です。 かつて私立女子大学の多くは「良妻賢母を育てる」といった当時の社会状況を前提として、文学部、教養学部、家政学部などの1~2学部のみで構成されていました。しかし、1986年に男女雇用機会均等法が施行されるなど、社会での女性活躍推進の動きに女子大学も呼応します。資格取得に直結する看護、保健、薬学、社会福祉、ビジネスなど、女性の社会進出につながりやすい学部を新設する動きが強まりました。 2023年度には日本女子大学が国際文化学部、共立女子大学が建築・デザイン学部、京都女子大学がデータサイエンス学部、武庫川女子大学が心理・社会福祉学部と社会情報学部を開設しています。2024年度も実践女子大学が国際学部、日本女子大学が建築デザイン学部、ノートルダム清心女子大学が国際文化学部と情報デザイン学部を新設しました。 このような動きはあるものの、社会科学系・理工学系などの新設学部の存在を受験生に認知させるには、ある程度の年月が必要です。また、認知が広がった後には、競合する共学大学との受験生の奪い合いになります。理系、特に工学系においては女子学生の入学者が増加傾向にあるものの、依然として入学者数の男女比には偏りがあります。 このため共学大学の理工系学部では、多様性の確保を理由に「女子枠」を設ける大学が増加しています。2026年度入試から京都大学、大阪大学、広島大学でも「女子枠」を新設します。共学大学の「女子枠」が増加することは、女子大学の理系学部にとって、受験生の獲得競争が激しくなることを意味します。 *5東京工業大は2024年10月に東京医科歯科大と統合し、東京科学大学になる予定