「CLAMP展」(国立新美術館)開幕レポート。「繋がった縁に導かれ 巡り巡ってまた戻る」
国内外で絶大な人気を誇る女性4人の創作集団・CLAMP(いがらし寒月、大川七瀬、猫井、もこな)。その原画展が東京・六本木の国立新美術館 でスタートした。会期は9月23日まで。音声ガイド・ナビゲーターは、CLAMP作品とも縁の深い福山潤が担当する。 本展は、CLAMPの活動35周年を記念し、少年マンガ、少女マンガ、青年マンガと幅広いジャンルにおいて多様な作品を世に送り出してきたその活動の軌跡をたどるものだ。会場は「C」「L」「A」「M」「P」といった頭文字をベースに、「COLOR」「LOVE」「ADVENTURE」「MAGIC」「PHRASE」「IMAGINATION」「DREAM」の7テーマから構成。1989年のデビュー作から最新作までの23作品を網羅したカラーイラストのほか、マンガ本編の原稿が約800点というボリュームで一堂に会する、史上最大の原画展となっている。 最初のエリア「COLOR」では、CLAMPのカラー原画を絵画的な視点から取り上げている。デビュー作『聖伝-RG VEDA-』(1989~96)などの初期作品ではカラーインクやエアブラシを用いてドラマチックに。いっぽうの『東京BABYLON』(1990~93)ではカラースクリーントーンを取り入れている。物語の世界観にあわせて変化する画材や画風にはぜひ注目してほしい。 「LOVE」では、CLAMP作品において描かれてきた多様な愛のかたちを振り返ることができる。固定概念にとらわれないその在りかたに、読者は何度でも人を愛することについて教わるだろう。 CLAMP作品の読者たちは、美しい絵柄にはもちろん、その冒険活劇にも心を躍らせてきたはずだ。「ADVENTURE」では、『聖伝-RG VEDA-』『東京BABYLON』のほか、『魔法騎士レイアース』(1993~96)、『X -エックス-』(1992~)、『カードキャプターさくら』(1996~2000[クリアカード編は2016~24])『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』(2003~09)といった、6作品のマンガ原稿が350点以上展示されている。儚くも力強い、そんな名シーンの数々と再会できる場所となっている。 「MAGIC」エリアでは、CLAMP作品を読んだときに感じる「魔法にかけられたような体験」を映像展示によって表現。巨大な壁面に投影された3種類の映像には数々のキャラクターが登場し、作品のなかに没入するような体験がつくり出されている。 美しい絵柄や冒険活劇に加え、読者の心を掴んで離さないのが、キャラクターによって紡がれてきた数々の言葉。「PHRASE」では、『XXXHOLiC』(2003~11)より選び抜かれた約40点のマンガ原稿が展示されているほか、様々なフレーズが散りばめられた空間で「CLAMPの言葉」を味わうことができるだろう。 「IMAGINATION」では、CLAMPが歩んできた35年の軌跡をたどることができる巨大年表や、使用画材、アニメのキャラクター原案のスケッチなど貴重な資料が展示されている。各エリアで紹介された作品がどの時期に描かれたものなのか、照らし合わせてみることをおすすめしたい。 長い旅路を終え、たどり着くのは「DREAM」のエリア。まるで夢と現実のあわいを歩むようなこの空間では、本展のためにCLAMPが描き下ろした特別なカラー原画が展示されている。 美しい絵柄、冒険活劇、心にのこるフレーズの数々。様々な物語の世界を巡り、CLAMP作品に魅了されてきた読者がこのCLAMPの軌跡をたどる展覧会に訪れるのも、ひとつの縁(えにし)であるはずだ。 そして鑑賞後のもうひとつの楽しみといえば、展覧会を記念し制作された豊富なグッズの数々だろう。夢のような旅路を終えたあとには、その記憶とともに物語のピースを持ち帰ってほしい。 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD. ©C,ST/CEP
文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)