「400万円かけてつくった収納スペースがゴミ溜めに…」家づくりのプロが“収納の多さ”で大後悔したワケ
「収納スペースが多い家」は一見メリットが多いように感じられます。しかし、いつの間にかただひたすらゴミを溜めるだけの空間になる危険性も?! 一級建築士・内山里江さんの書籍『家は南向きじゃなくていい』より「適切な収納スペース」の重要性についてご紹介します。 マイホームの「広いお風呂」は一生後悔する? 家づくりのプロが「安易に広くするのは要注意」と断言するワケ
収納の話 計画性なき収納は悪魔のスペース
400万円かけてゴミ溜めをつくってしまった思い出 「収納スペースが多い」というのは、家を買う人に向けて一つのアピールポイントになるようです。備え付けの収納スペースが少ないと自分で収納棚などを買って計画しなければなりませんから、最初からある程度ついていると安心できるのはよくわかります。しかし、「なんとなく」でつくった収納スペースは悪である、と声を大にして言わせてください。というのも、私自身、収納に関しては苦い思い出があるからです。 以前私が住んでいた二世帯住宅には、屋根裏にロフト形式の6坪(12畳)程度のスペースがありました。「将来的に子ども部屋として使ってもいいし、趣味の部屋にしてもいいし、納戸みたいにしてもいいし」と、まさに「なんとなく」つくってしまったのです。 その家に住んで十数年経ったあるとき、家じゅうを片付けるタイミングがありました。いわゆる「断捨離」をしようと思ったのです。家族みんなに協力してもらい、「3年以上使っていないものは捨てる」というルールで、大型の「ごみバケット」まで用意して臨みました。ごみバケットをクレーンで吊ってトラックに載せ、そのまま処分場に持って行ってもらう算段です。さて、我が家の本気の断捨離がどうなったか。 なんと、ロフト形式の6坪のスペースはものの見事に空っぽになりました。バブル時代のスーツ、昔流行ったスポーツグッズ、日焼けマシン、結婚式で使ったキャンドル、雑誌類、学生時代のグッズ、アルバムなど、存在すら忘れていたようなものばかり詰め込まれていたからです。1坪あたりの建築単価を指して「坪60万~80万円」などとよく言いますが、6坪なら400万円前後はかかっているわけです。つまり、我が家では400万円もかけて用意したスペースに、十数年もかけてただひたすらゴミを溜めていたのです。しかも、ごみバケットの中身を処分してもらうのにも10万円くらいかかりました。 400万円もかけてゴミ溜めをつくり、それを捨てるのにさらに10万円もかけてしまった。その事実に気づき、私は愕然としました。自分たちとしては「収納しているつもり」だったのですから。 この苦い経験から、「なんとなく」でつくった収納スペースは悪だと考えるようになりました。余分なスペースがあると、とりあえずそこに突っ込んでおけばいいと思い、人は物をどんどん溜めてしまいます。しかもそこが行き止まりのスペースだと物を動かすタイミングがないため、何を入れたかも忘れ、延々と溜め込んでいきます。これは「収納」とは言えません。 次回はここから学んだ収納のテクをご紹介します。
【Profile】内山 里江(うちやま りえ)
一級建築士 株式会社コモドデザイン代表 1972年、高知県に生まれ、12歳まで愛媛県で過ごす。子供の頃、建築家・宮脇檀氏の設計で建てた父の友人の家に感動し、いつか自分も建築家になることを夢見る。山口県の工務店に勤務して実地で経験を積み、一級建築士になる。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザイン。「家を単なる休む場所ではなく、遊べる場所に」をモットーに、付加価値を高める設計を提案し続けている。
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