話題作からコメディー、絵本、ビジネス書まで 新たな視点生む書店員の2024ベスト2冊 書店バックヤードから
大橋 『お梅は呪(のろ)いたい』(藤崎翔著/祥伝社文庫)。地元の中学校がこぞって図書室に入れています。古民家から出てきた日本人形のお梅は、戦国大名を呪いで滅亡させた実績のある人形。ユーチューバーに引き取られて彼を呪おうとするんですが、心霊動画がバズって喜ばれてしまう。
佐々木 設定が本当にいまどきで、令和の小説という感じですね。
大橋 その後もお梅を拾った人に次々と幸運をもたらしては、こんなはずでは…となる短編集です。気楽に楽しめますよ。
百々 僕のもう一冊は『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』(ベント・フリウビヤ、ダン・ガードナー著・櫻井祐子訳/サンマーク出版)。大規模な事業でなぜ予算や納期がオーバーするのかを、失敗例と成功例からひもとく。じっくり検討してから動いた方が、結局は早く安く終わるとかね。
藤井 追加費用が何億円、というのはよく耳にするニュースですね。
百々 ビジネス書ですけど、人生は自分のビッグプロジェクトと考えれば、自己啓発書にもなり得るんじゃないかな。新しい視点で描かれた一冊。
大橋 僕のもう一冊は『かいじゅうのすむしま』(谷口智則作/アリス館)。島に大きな怪獣がいて、「じゅうみん」は、雨が続いたり日照りが続いたりするのは怪獣のせいだと思っている。怪獣が大きな傘を差して雨を防いだり、じょうろで雨を降らせたりしてくれたことには気づかない。あるとき、飛んできたミサイルを体で受け止めていたんだけど-。
佐々木 教科書に載せてほしいようなお話ですね。
大橋 どんなことも、当たり前だと思ってたらあかんぞって。僕、谷口さんの絵本が好きなんですよね。
■日本のフルーツの歴史
藤井 今年のラストは、「食」でおなじみとなりつつある佐々木さん。
佐々木 『日本の果物はすごい 戦国から現代、世を動かした魅惑の味わい』(竹下大学著/中公新書)。6つの果物から日本の歴史を語っています。果物は古くは糖分として重宝されて、中でも柿は薬のように使われていた。イチゴを巡る福岡と栃木の品種改良の歴史も書かれています。