4.9埼玉“世紀の一戦”を前に村田諒太が“ゴロフキン仕様”に変貌…「1ラウンド勝負」と1対4の不利賭け率を覆す戦略明かす
問題は世界戦22度勝利のゴロフキンのオーラに圧倒されないかどうか。本田会長も、「気持ちの部分での心配はないだろう」と信頼しているが、村田は日本のボクシング史に刻まれる世紀のビッグマッチを12日後に控えての心境をこう吐露した。 「なかなか経験しない心境ですね。試合が怖いという恐怖心もちょっとあるが、2年も延期が繰り返されると延期が一番怖い。試合できないことを考えたら試合のできる恐怖が和らぐ」 2019年12月23日にスティーブン・バトラー(カナダ)を5ラウンドに葬りタイトルを防衛して以来、新型コロナの影響で内定していた試合が8度も流れた。昨年5月には、WBAの無敗ランカーとの対戦が決定。Tシャツまで作ったが、最後の最後で、対戦相手本人が米国大使館のビザ取得の場に現れずに中止になった。そしてゴロフキン戦も当初は昨年12月29日に行われるはずが、政府の水際対策で外国人の新規入国が禁じられ、延期になっていた。この2年のトラウマが村田をそういう心境にさせるのも無理はない。 それだけに無事リングに上がることができた際、それだけに満足してしまう、燃え尽き症候群に襲われるという懸念もある。 “戦う哲学者”の村田は、そのメンタル対策にもぬかりはなかった。 「ボクサーは、これが最後だと思ったり、ここまでやっと来たなと思ったりすると、リングに上がる前に満足感を得て燃え尽きてしまう。(試合で)実力を発揮できず、集中力が欠いてしまうことがある。それが一番、心の中では嫌なパターン。無になる、意図しないでできるようにメンタルを持っていかなくちゃならない。ただ当日は予想できない。これ(メンタル)を作れるかどうかもわからないことなので、そういうことになってしまう恐れを持ってリングに向かう心づもりでいる。“やったあ、たどり着いた。よしよしリングだ”という感傷に浸ってしまわないように、感傷に浸ってしまうかもしれない予測だけをして4月9日を迎えるしかない。こうしたら、その気持ちが消えますよとか、絶対勝つ強い気持ちもってますと、言えたもんじゃないですから」 今回、ソウル五輪のアーティスティックスイミングのデュエット銅メダリストでメンタルコーチでもある田中ウルヴェ京氏(55)のメンタルトレーニングを定期的に受けてきた。試合に向けて心を整える術も身につけてきた。 ロンドン五輪でメダルが確定した後に決勝のリングに向かう際は、燃え尽き症候群はなく、世界選手権の準決勝で圧勝した相手だったため「絶対に勝てると思って、勝ったら何を話そうかというようなことばっかり考えて泥試合になった」という。 「そんな変なことを考えないで自然と入っていきたいですね」 刻々と近づいてきた運命の日。村田は4月1日にスパーリングを打ち上げて最終調整に入る。またゴロフキン一行は31日に来日する予定だ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)