足の速さは本当に生まれつき? 盗塁王・聖澤諒さんが勧める「走れる子に育つ」遊び
多くのスポーツに取り組んだことが後に野球に生きた
高学年になって始めた陸上は、陸上クラブに入っていたわけではなく、市の選抜メンバーに選ばれて大会や記録会などに参加していました。大会では100メートル走はもちろん、走り幅跳び、800メートル、1500メートル、リレーなど、エントリーできる種目は全部出ていました。 家にいるのが嫌で外で体を動かすのが大好きな子どもでしたから、いろんな種目に出られることがとにかく楽しかったのです。ちなみにエントリーしたほとんどの種目でメダルを取っていました。陸上が野球に役立ったことは言うまでもありません。 たくさん走ることで足腰が鍛えられます。走力はもちろん、体力、心肺機能も高まりますし、幅跳びでは跳躍力もつく。体幹ももちろん鍛えられます。 冬場にはハンドボールもやっていました。更埴市は長野でも北部に位置していて雪が降る冬の間はグラウンドが使えません。朝6時は真っ暗でおまけに寒い。なので冬は体育館で野球の練習をやりつつ、ハンドボールの練習も行っていました。 遊びでやっていたのではなく、ハンドボールの大会もあるので一生懸命に練習していました。ハンドボールは肩、肘は使わずに胸郭や下半身を連動させて投げる必要があるので、正しいフォームの習得や故障防止につながるとも言われています(もちろん当時はそんなことは全く意識していませんでしたが)。 ちなみにロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手もトレーニングの一環でハンドボールを投げているそうです。 剣道、陸上、ハンドボール。ゴールデンエイジ期に野球だけではなくたくさんの運動、スポーツをしていたことが、後に僕の野球人生の大きな財産になったと言えるかもしれません。 両親も兄弟も足は速くないのに…次男の身体能力を育てた「鬼ごっこ」 足の速さは遺伝などの先天的な要素も大きいと思います。ですが、私の両親は特別運動神経が良かったわけでも、足が速かったわけでもありません。 兄と弟も目立って足が速いわけではありませんでした。ではなぜ僕だけ足が速かったのでしょうか? はっきりとした理由は分かりませんが、小さい頃からとにかく外で遊び、走り回っていたこと。そういったことが少なからず後天的要素として足の速さにつながっているのではないかと思っています。 いまの子ども達にも、もっと外で遊ぶことを勧めたいと思っています。特に勧めたいのが「鬼ごっこ」です。 楽天イーグルスアカデミーで子ども達に野球を教えるようになってから、鬼ごっこは子どもの運動神経の発育の面で大変理にかなった素晴らしい遊びだと感じています。僕も子どもの頃は鬼ごっこが大好きでよくやっていましたが、鬼から逃げる子は短い距離を繰り返しダッシュすることで結果的にたくさんの距離を走ることになります。 ただ逃げるだけではなく、ときには複雑なフェイントを入れながら逃げるので、単純に何本も直線ダッシュをやらされるよりも楽しく走ることができます。いろいろな体の動きもできますし、子どもにとっては一番良い遊び、運動だと思います。 鬼ごっこ以外にも、学校の休み時間にドッジボールをやったり、鉄棒をやったり、野球ではあまり使わないような筋肉を動かすことができる運動はたくさんあります。そういったことが少しずつ、少しずつ積み重なっていくことで、走力や運動神経に良い影響を与えていくのではないでしょうか。