14歳でスカウトからデビュー。佐津川愛美が新体操全国大会出場から俳優になるまで
「愛ちゃん、新聞に載ってるわよ」
同作で、ブリーリボン賞にノミネートされたことは、母親から教えてもらった。 「ある朝、起きたら、『愛ちゃん、新聞に載ってるわよ』と。とてもありがたいことですが、プレッシャーに感じることはありませんでした。私、競うことが好きなわけではないので(笑)」 以来、50本を越える映画、100本以上のドラマに出演。20年もの間、演じるという仕事を続けている佐津川さんにとって転機となった作品とは──。 「やはりデビュー作の『蝉しぐれ』。そして、高校3年生で出演した映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』です。『腑抜け~』で演じたのは、猫背でいつも漫画を描いているような少し暗い女の子。個性的な役柄を演じたことで、俳優としての幅が広がりました。当時、オーディションを受けに行くと、いつも同じようなメンバーで、『今回は誰が受かるんだろう』という空気が流れていたものです。小さい頃から芸の道を目指してきた方との差も感じていました。そんな時、『腑抜け~』に出演したことで、そこから抜け出し、ちょっと癖のある役柄で声がかかるようになりました。有難いきっかけでした」 映画業界に携わっていきたいと決めたデビュー時の思いは、今もぶれることはない。 「俳優で一生食べていこうとは今も思っていません。それに、他にもやってみたいこともたくさんあって、たとえば、そのひとつである監督業は声をかけてもらったことで実現できました。私、10代の頃、写真が趣味だったんです。パソコンで、色を加工することにハマったこともあります。その流れで、趣味の範囲でもいいので、いつか映像を撮ってみたいという気持ちはずっと抱き続けていました。人との出会いって、やはりとても大切ですね。 築き上げたご縁のストックがある時、思いもよらない場面で生きてくる。俳優としてひとつひとつの作品に全力で取り組んでいくなかで、さまざまな人と出会い、ご縁が広がっていく──。とてもありがたいことだと思っています」 佐津川愛美(さつかわ・あいみ) 1988年生まれ、静岡県出身。2005年、デビュー作『蝉しぐれ』(黒土三男監督)で、ヒロインの少女時代を演じ、第48回ブルーリボン賞助演女優賞にノミネートされる。2007年には、映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(吉田大八監督)で、第50回ブルーリボン賞助演女優賞と新人賞の2部門にノミネート。その後、さまざまなドラマ、映画に出演。主な出演映画・ドラマに『ヒメアノ~ル』、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』『サブスク不倫』『最後から二番目の恋』、『毒娘』(主演)など。近年は短編映画の監督も務めるなど、さらに活動の幅を広げている。
長谷川 あや(ライター)