<STAP論文問題>理研は小保方氏一人に責任を押しつけている?
2月10日、理化学研究所は文部科学省で記者会見を開き、STAP細胞の論文をめぐってすでに不正を認定されている小保方晴子・元研究員を「懲戒解雇相当」に当たる、と説明しました。その上で、小保方氏に対する刑事告訴(窃盗や偽計業務妨害など)と1500万円にのぼる検証実験の経費やこれまでの研究費などの返還請求についても検討中であることを明らかにしました。これらについて、理研は今後1~2か月のうちに結論を出す、としています。(粥川準二/サイエンスライター) 【動画】小保方氏への告訴や研究費返還「理研として検討している」
「検証」にかかった1500万円は?
STAP細胞の論文発表にかかわる「事件」はまだ終わっていません。 この「事件」はそもそも、小保方氏らが論文において「不正」、つまりデータのでっち上げである「捏造」や、データの不適切な操作である「改ざん」、他人のデータなどを不適切に使用する「盗用」などを行った疑いをもたれたことから始まったはずです。 それを明らかにするためには、論文と実験そのものについて徹底的に調査するしかありません。関係者への聞き取りはもちろん、研究ノートなどの精査、残されたサンプルや生データの分析などが不可欠であり、最優先すべきでした。また、ほかの研究者たちが小保方氏らの論文に書かれた通りに「追試」をしてみても、同じ結果が出ないことも問題になりました。「再現性」がないことが疑われたのです。 しかし、筆者がこれまで繰り返し述べてきたように、「不正の有無」と「再現性の有無」とは、本質的に異なることです。物事の順序からいえば、まず「不正の有無」を調べ、もし論文に「不正はない」ことがはっきりしたならば、あらためて「再現性の有無」を確かめるために追試=再現実験を行なうことには意味があるかもしれません。しかし、もし「不正がある」ことがわかったならば、追試など不要です。 ところが理化学研究所は、「不正の有無」の確認よりも「再現性の有無」の確認を優先しました。実際、後者である「STAP現象の検証」の最終報告は2014年12月19日になされ、前者である「研究論文に関する調査」の最終報告はその後の同年12月26日になされました。 しかも、「STAP現象の検証」は、論文の共著者でもある丹羽仁史氏が中心になり、問題の当事者である小保方氏も加わって行われました。さらに論文には書かれていない方法まで試されました。客観性に疑問があるどころか、追試でも再現実験でもない「新しい実験」が、なぜか「STAP現象の検証」の名の下で行われたのです。 「検証」の結果、STAP現象は、周知の通り何も再現されませんでした。この計画には1500万もの予算がかかったといいます。理研は小保方氏への研究費などの返還請求について、「STAP現象の検証」にかかった予算も検討するとしていますが、この1500万円に関してだけは、理研の幹部たちが負担するべきではないでしょうか?