<STAP論文問題>理研は小保方氏一人に責任を押しつけている?
共著者と理研幹部の責任は?
「STAP現象の検証」が報告された2014年12月19日に小保方氏は理研に退職願いを提出し、理研はそれを受理してしまいました。したがって理研が小保方氏を「懲戒処分相当」とみなしても、彼女はすでに理研の職員ではないので、何の効力もありません。保留にして、処分が下させるのを待たせるべきした。 また、「研究論文に関する調査」で、不正とは認定されなかった図表16点についても、「小保方氏にオリジナルデータの提出を求めたが、提出されなかった」ですませてしまいました。元のデータを出せなくても不正とはみなされないのならば、「不正はやった者勝ち」です。 ほかの共著者や責任者についても、処分は甘いと言わざるを得ません。 共著者だった若山照彦・山梨大学教授は「出勤停止」相当、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターのセンター長だった竹市雅俊特別顧問は「けん責」(一般的には始末書を書かかせることなど)。共同著者の丹羽仁史チームリーダーは「厳重注意」とされました。共著者である笹井芳樹副センター長についても、責任があるとされましたが、故人であるため明らかにされませんでした。野依理事長をはじめとする理事の責任には触れられませんでした。 その一方で、理研は小保方氏への刑事告訴や研究費などの返還請求を検討しているというのですから、彼女1人に責任を押しつけようとしている、という批判は避けられないでしょう。 「研究論文に関する調査」では、ES細胞の混入が「故意」によるものか、「過失」によるものなのか、また誰が行ったのかは、わからなかったといいます。刑事告訴とそれにともなう強制捜査によって、それらの疑問が解明され、小保方氏含めて誰にどれだけの責任を負わせるべきか、はっきりするかもしれません。 もちろん、現在はっきりしていることだけでも、小保方氏にかなり大きな責任があることは間違いないでしょう。しかしながら、理研幹部にはそもそも実力に疑問のある小保方氏を採用したことなどについて、共著者たちには小保方氏の用意したデータを鵜呑みにして確認を怠ったことについて、大きな責任があるはずです。また理研幹部は、問題が発覚してからの事後処理が適切でなく、科学への信頼を傷つけたことの責任も問われるべきでしょう。
■粥川準二(かゆかわじゅんじ) 編集者を経てフリーランスのサイエンスライター・翻訳者に。著書『バイオ化する社会』(青土社)など。国士舘大学、明治学院大学非常勤講師。博士(社会学)