監督を交代させるだけではチームは変わらない。屈辱の最下位に沈んだ西武が取り組むべき「2つの重要課題」
2人の投手と長期契約を結ぶことはチームにとって大きいのはもちろん、本人たちにとっても余裕を持ってキャリアを積み重ねるというメリットがあるのではないか。西武の先発投手陣には平良と今井の他に、球団17年ぶりの新人2ケタ勝利を挙げた武内夏暉や隅田知一郎、渡辺勇太朗などが顔を揃えている。チームが長期的な視野に立ってチームを作っていく上でも、2人の存在は大きな意味を持っているはずだ。 2つめは大掛かりなトレードの実行だ。 今季の西武打線は貧打に喘いだ。西川愛也や山村崇嘉など飛躍の足がかりを得た若手選手がいる一方、野手陣全体に厚みがないのが現状だ。ドラフトも控えるが、こちらはあくまで2~3年後以降のチームに必要な戦力を獲得する場だ。トレードで、長距離砲と二遊間という2つの補強ポイントを埋めたい。 まず狙ってほしいのがDeNAの筒香嘉智だ。メジャー復帰の今年度は目立つ活躍はなかったが、やはりその長打力は大きな魅力だ。中村剛也とプレーすることが再起につながる可能性も十分あり得るだろう。 ネックになってくるのは交換相手だが、それなりの選手を出さないと相手は納得してくれないだろう。西武の陣容からすると投手になるがそれなりに人材は豊富だ。ドラフト1位クラスの選手を差し出すくらいの覚悟が必要かもしれない。 2人目に狙いたいのが中日の根尾昂だ。それも、野手として獲得する。 根尾を狙う理由はその豪快なスウィングが西武に合っているのと、二遊間に加えて外野も守れるなどユーテリティ性に優れるところだ。二遊間に力強いスウィングができる選手を置くことは、今の西武に必要と言えるだろう。 現役ドラフトで狙えるという声もあるが、現役ドラフトの難しい点は欲しい選手が獲得できるとは限らない点だ。しかも、それなりに人気のある選手を差し出さなければならない。「それなりに」とは「え、そんな選手がいるの?」と複数の球団が思うような選手だ。現状、西武の現役ドラフト対象でそんな選手を差し出す余裕はないし、欲しい選手を先に獲得されてしまう可能性はある。 しかし、トレードなら自分たちが狙った選手を獲得するため、空いて球団と直接交渉できる。筒香も根尾も、交換要員は投手になるだろう。なぜなら、チームで最も層が厚いポジションだからだ。 遠藤成(阪神)やDeNAの大田泰示、楠本泰史(ともにDeNA)など、すでに他球団の退団が決まった選手を獲得するべきいう声もある。しかし、いずれもチームを大きく変える補強とは言えない。大掛かりなことをやっていかないと、チームの変革は実現できな いだろう。 2人の投手との長期契約と思い切った大型トレードの実施。監督や新首脳陣の顔ぶれも大事だが、何より戦力をアップさせなければならない。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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