“物”の気持ちわかる難役も自然に 小芝風花のストロングポイント
異彩放つ出演作 役作りへの真摯な取り組み
そんな中でもとりわけ異彩を放つのが、2019年12月に4夜連続で放送されたNHKスペシャルシリーズ「体感 首都直下地震ウイーク」内のドラマ「パラレル東京」だ。もう一つの架空の東京「パラレル東京」を舞台に、オンエアと同じ12月2日から首都直下地震が発生した想定で、地震発生からの4日間における架空のテレビ局のニュースチームの奮闘をほぼリアルタイムで描いたもの。小芝は同作にアナウンサー・倉石美香役で主演した。 「急きょ、報道番組のメインキャスターを務めることになった入局して4年目のアナウンサーという役どころでしたが、見事に視聴者の心をつかんでいました。本職のアナウンサーに失礼がないようにと、徹底してアナウンスの練習を積み、また、東日本大震災の報道映像資料をよく見たうえで役に臨んだのが視聴者にも伝わったのでしょう。『べしゃり暮らし』でもお笑いの特訓をして準備するなど、役作りに真剣というか、役者という仕事に真摯に取り組んでいるようです」(スポーツ紙・50代男性記者) そうした姿勢は視聴者にはもちろんのこと、共演者はじめ現場のスタッフにも伝わるはずだ。出演作が途切れない理由の一端は、小芝の仕事に対する取り組みにあるのだろう。
影響受けた朝ドラ波瑠のセリフ「やわらかい心を持ちなさい」
2015年度下半期のNHK連続テレビ小説「あさが来た」では、お母さん役を演じた波瑠のセリフに「やわらかい心を持ちなさい」というセリフがあって、小芝はそこから柔軟性を持つことの大事さを感じたという。取材メモをひもとくと、「私はまだ22年(当時)しか生きてなくて、経験値もいろんなところで不足しているし、だからこそいろいろな人の意見を聞いて、柔軟に視野を広げていける、そんなやわらかい心を持ちたいなって思うんです。どうしても頑固に、意固地になっちゃう部分もあるんですけど、なるべくいろいろな意見を聞いて、そのなかから一番いい選択をしていきたいです」 この言葉が小芝の、女優という仕事に対する真摯な姿勢を物語っているように思う。 今作「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」で演じる清水萌子美役は、相手がネジだろうがぬいぐるみだろうが会話できてしまう特殊な能力を持つことから周囲に気持ち悪がられたり、距離を置かれ、自身も人と向き合うことに怖さを覚えて生きてきたという、なかなか想像しがたい役柄。しかしそんな経験を経ているからこそピュアな優しさが伝わってくる萌子美という人物を、小芝は1話から自然体で演じていた。2話以降も、引き続き見守りたい。 (写真と文:志和浩司)