13代続く湘南の地主・石井さん、地域の生態系や風景まもる賃貸住宅で”100年後の辻堂の風景”を住まい手とつくる 「ちっちゃい辻堂」神奈川県藤沢市
「私の父がしてきた『大家業』と、光のすることはイチから10までぜんぶ逆。父は昔ながらの感覚で、とにかく強烈な人。土地を守っていくことが第一、家は建てたらあとは管理会社にまかせておけばいい。でも光は、住民の人の引越しの手伝いから、段ボールをまとめて軽トラで公民館に持って行ったり……。よくやっているなあと思っています。ただ、事業にともなって借金をしていますし、不安はありました。そこである時、聞いたんです。『本当に大丈夫なの』って。そしたら光が『ここまでやってうまくいかないなら、この世界は生きている意味がない』ということを言ったんです。ああ、ここまでの覚悟ならもう支えるしかないと腹が決まりました」といいます。 光さんは光さんで、自分にしかできないことを、という覚悟を持っていました。 「地主の家系に生まれ、引き継いだ土地は都市部でも田舎でもなく、しかも離婚していて父親がいないので1代飛ぶ。このポジションにあるので、人が住めば住むほど生態系が回復していくというモデルを社会に広めやすい、そういうお役目があると思っています」(光さん) 大学で生態学を学び、コミュニティデザインやパーマカルチャーなどにも興味があり、コミュニティ農園の代表をしていて、しかも実家は地主業。確かにここまでの条件はなかなかそろわないもの。石井光さんらしいミッション、それが「ちっちゃい辻堂」なんですね。
続いて、実際に暮らしている人に話しを聞いてみましょう。
「住体験を創造したい」。50歳を過ぎて見つけたノイズのない暮らし
浦川貴司さんは、現在、夫妻とお子さん3人の5人家族で「ちっちゃい辻堂」にお住まいです。住民でもありますが、現在は仕事としても「ちっちゃい辻堂」プロジェクト全般に携わっています。 浦川さんの、引越しと転職という大きな変化のきっかけは、子ども達が成長し、賃貸/分譲/注文住宅などのくくりに囚われず、「次の暮らし、住体験の創造をしたい」と漠然と思い描いていたことにはじまります。 「SNSで『ちっちゃい辻堂』を知り、前に住んでいた家も近くなので、ふらっと行ってみたら光さんがいて、立ち話をしたんです。そこで出た言葉が『100年後の辻堂の風景をつくる』というフィロソフィー(哲学)でした。これは、この1年で聞いた話でいちばんいい話だなと感銘をうけて、2023年秋に引っ越してきました。ついでにいうと転職もしました(笑)」
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