小笠原、菅野、青柳…メジャー球団スカウトは「日本人投手」をどう評価する? 甲子園での活躍が“不安材料”になるケースも
高校時代から有望選手をチェック
「今では珍しい光景ではなくなりましたが、メジャーリーグのスカウトも甲子園大会を視察しています」(アマチュア野球担当記者) 日米協定では、相手国の有望アマチュア選手を自国のドラフト会議で指名できないことになっている。なぜ、指名できない選手を視察するのか――21年夏の甲子園大会中、その疑問をア・リーグ中部地区球団のスカウトにぶつけてみた。すると、こう答えた。 「この世代の誰かが、将来、メジャーリーグに挑戦してくるかもしれない。そのときに備えての視察です」 将来、メジャー入りした選手に対し、より適切な判断や評価を下すための準備だと言う。 数年後、甲子園大会で活躍した投手がメジャーリーグ挑戦を表明し、争奪戦となったとする。そのとき、ライバル球団が知らないアマチュア時代の視察内容を伝えれば、選手の代理人は「そこまで調べてくれているのか」と好印象を抱き、優位に交渉が進められる。 また、仮に獲得後に故障してしまった場合でも、10代でどのような起用がされていたのか編成部門に報告できる。仮に10代で“酷使”されていたのなら、故障に備えて球団としてどんなケアをしていくべきかの適切なプランも立てられる。こうしたアマチュア時代にまで遡った詳細なデータを作ることは、スカウト自身へのプラス査定にもなるそうだ。 「今永はサイヤング賞の投票で5位になりました。同じ左腕として、小笠原に今永を重ねて見ているのでしょう。ただ、小笠原はWBCやプレミア12大会に出場していません。彼が出場した15年のU-18大会のデータを探したところ、2試合しか投げていなかったので参考にならなかったとも聞いています。そうなると、シーズン中のデータから判断しなければなりませんが、今季が5勝11敗、23年が7勝12敗。味方打線の援護に恵まれなかったため、勝ち星が少ない点はメジャー球団のスカウトも理解しています。ただ、とにかく情報が少ない。過去の資料を調べ直したら、15年夏の甲子園大会で優勝していることが分かったと。1年生からベンチ入りし、主力投手としてかなりのイニング数を投げていたので、スカウトは当時の様子を知ろうとしたんでしょう」(前出・米国人ライター) 35歳で海を渡る菅野智之も年齢を含め、マイナス評価はされていない。米MSNのスポーツニュースでは、「多くの日本選手がメジャーリーグに来る際、ドジャースをホームに選んできた。そんなドジャースにとって、確固たる成績を残してきた菅野のようなベテランを獲得することは当然だ」(11月20日付)と伝え、パドレスのゼネラルマネージャー、A・J・プレラー氏は「多くの実績を残し、経験もある。トーキョージャイアンツのエースということは、最大のステージで投げてきたということ。私たちは交渉の準備を進めている」とGM会議中に発言している。レンジャーズ、エンゼルス、ブルワーズ、メッツも興味を示しているという。 「菅野はVCスポーツグループと代理人契約を結びました。同社のクライアントにはドジャースのムーキー・ベッツ(32)もおり、その経緯でドジャースと交渉すると予想されています」(前出・現地記者)