今年は一味違う? パリに一切触れない「パリ横断」夏の部
今年もやってきた、パリ横断夏の部。え?少し早いんじゃないかって? 今年はパリオリンピックの影響で、6月の最終日曜日に変更になった。それでも、今回はバカンスに行く前の時期だから、多くの人が参加しやすいのではないかと思った。また、ここのところ一緒にあちこち出かけるセルジュさんにも、「2CVを貸してあげるから出なよ」と誘われたりして、個人的にも少々盛り上がっていた。しかし、その時期が近づくにつれ、暗雲が垂れ込め始めた。すでにオリンピック開催まで1カ月を切っていたこの日は、パリ市内はすでに警戒体制で、多くのモニュメント周辺は交通規制が敷かれていた。結局、パリ市からは「パリ市内での開催を禁止する」という通達が来たのだ。コロナの時にも振り回されたが、いまだに難癖をつけてくる。 【画像】オリンピックの影響で例年とは異なるルートで開催されたパリ横断(写真49点) ということで、急遽コースが変更され、パリの西側にあるサンクルー公園がスタート地点となった。このサンクルー公園は、公園といってもその大きさは東京ドーム120個分の大きさ。もとは1577年にガブリエル・ド・サンティが建てた城とその庭園で、ルイ14世がここを購入した。革命後もナポレオンによって宮殿を新たに作るなどした場所であり、今では真夏の祭典ロック・アン・セーヌ(Rock en Seine)でも有名だ。 参加車両はスタート地点のサンクルー公園でコース図やプレートを渡される。8時半になると、とっとと外に追いやられる。仲間同士待ち合わせて一緒に出発ということも難しく、到着順にどんどんスタートさせられてしまう。もらったプレートを付ける暇もなく、公園を出て路肩に停め、その作業をする車両も。 まずはヴェルサイユ宮殿に向けて走る。宮殿を抜け、森や渓谷を通りダンピエール城で折り返して、いつものムードンの公園でピクニックをするというものになった。これでは、パリに一切触れないパリ横断である。 パリとは違うが、緑に囲まれたコースをゆったりと走れるため、パリの渋滞に比べれば楽しいかもと、当初は参加者は肯定的だった。しかし、実際に走ってみると、奥深く走れば走るほどペースは遅くなった。日曜日の午前中、このパリから西側のあたりはサイクリングの定番コースだ。多くのサイクリストが走っており、狭い車線、くねくね道で対向車が分からないため、サイクリストの団体を抜かすこともできず、彼らのペースで走ることにる。やっと抜かすと次のグループの後部に追いつくの繰り返し。とはいえ、僕もメタボに引っかかったのをきっかけに一時期自転車にハマったことがある。当時住んでいたのはルノーの街、ビヤンクール。ちょうど今回走ったコースはよく自転車で走った懐かしいコースでもあった。緑のトンネルやちょっとした峠道は走る楽しさを味わいながらコースを進む。 多くの参加者がヴァンセンヌよりパリの東側に住んでおり、スタート地点が遠くなったことやコース変更により、バイクやモビレット、トラクターや自転車の参加者が少なくなってしまったのは残念だった。それと、コース上に停まって集まれる場所も少なく、ドライブを楽しむというものも今までのパリ横断とは違った。それでも沿道には人が出て写真を撮ったり手を振ったりしていた。スポーツカーを見るたびに興奮する子供たちもいた。始まりのドタバタを考えると、寒くもなく暑くもなく過ごしやすい気温で、一味違うパリ横断を今年も参加者みんなが楽しめたのだ。 写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI
櫻井 朋成