W杯アジア最終予選初戦のメンバーに森保監督が選んだ東京五輪組は久保、堂安ら6人…この人選をどう評価すべきか
招集された3人のキーパーのなかで、身長190cm体重84kgの谷は最もサイズに恵まれている。ただ、今回が国際親善試合ではなく公式戦であり、ポジションがひとつしかない特性も考えれば、百戦錬磨の経験を持つ川島永嗣(38・ストラスブール)、森保ジャパンで最も出場数の多い権田修一(32・清水エスパルス)に次ぐ序列となる。 それでも、伸び盛りの若手はいい意味で予想を裏切る急成長を見せる。東京五輪で谷を指導した川口能活GKコーチも20歳でアトランタ五輪に臨み、翌1997年からA代表の守護神に定着。1998年のフランスワールドカップのゴールマウスを守った。 「たくさんのことを経験して、いろいろな厳しさを知っている方々だと思います。自分の目で見ながらいろいろなものを感じて、自分のものにしていければ」 A代表選出後にオンラインで対応した谷は、ワールドカップ代表を経験した2人と同じ時間を共有できることに目を輝かせた。6月に招集されていたシュミット・ダニエル(29・シントトロイデン)、中村航輔(26・ポルティモネンセ)を追い抜き、東京五輪での大活躍を自信に変えて参戦する谷の姿には、川島と権田も刺激を受けるはずだ。 東京五輪にオーバーエイジで参戦した遠藤航(28・シュツットガルト)を軸とするボランチでは、守田英正(26・サンタクララ)がパートナーを組む上でのファーストチョイスになる。そこへタイプの異なる柴崎岳(29・レガネス)が昨年11月以来の復帰を果たし、センターバックでもプレーできる、186cmの長身を誇る板倉が加わった。 複数のポジションでプレーできる、ユーティリティーぶりを評価されてのA代表招集は中山にもあてはまる。東京五輪では左サイドバックとして5試合に先発したが、途中からボランチに回った試合もあり、柏レイソル時代からセンターバックも務めている。 そのなかで今回は、左サイドバックとしての期待を寄せられている。フィールドプレーヤーで最年長の34歳、歴代2位の125キャップを誇る長友佑都が7月にマルセイユを退団したままで、所属チームがない状態で招集されているからだ。 「彼の活動が一般的には不透明なところがあると思いますけど、今後の所属先に関するある程度の道筋やいま現在のコンディションも把握した上で招集につなげている」 長友に関してこう言及した森保監督は、中山だけでなく佐々木翔(31・サンフレッチェ広島)も招集した左サイドバックの人選に関してこう語っている。 「実際にチームに合流して、チームトレーニングをしていくなかであらためてコンディションを確認して、起用をどうするのかを考えていきたい」 3月と6月の活動でも柴崎の招集を考えた森保監督は、柴崎自身のけがやラ・リーガ1部昇格がかかっていたレガネスの状況もあってリストに加えなかったと明かした。その意味では冨安以外では、中山が先発を射止める可能性が高いと言えるかもしれない。 ただ、所属先を変えたばかりの久保と板倉には、東京五輪の戦いをへてさらに大きな信頼感を寄せているからこそ招集した。移籍が取り沙汰されている冨安と堂安を含めて、8月末まで移籍市場が開いているヨーロッパの情勢に、可能な限り対応できる体制をJFAとして整えながら、森保ジャパンは週明けの30日からオマーン戦へ向けて始動する。 (文責・藤江直人/スポーツライター)