森林、木材、建築で事業と脱炭素化を狙う住友林業

画像提供：住友林業

住友林業は、脱炭素化目標などへの社会貢献と、自社の「森林」、「木材」、「建築」の3分野での事業のさらなる成長を両立させる方針を掲げている。非住宅の木造及び木質化ビルを推進していく考えだ。 自社の2050年カーボンニュートラル目標を達成する上で、Scope1,2はすでに達成しており、残るScope3を達成するには顧客建築物のZEB化などに加え、建物の木造化・木質化が不可欠となる。 同社は2018年、創業から350周年を迎える2041年までに、都心部に木材を主要部材とした超高層ビルを実現する研究・技術開発構想（W350計画）を発表。建物の高さは350m、地上70階建てで、延べ床面積は45万5000m2。 建物の構造は木鋼ハイブリッドで木造部分が9割を占め、残りは耐震補強などのため鉄骨を活用する。総木材使用量は18万5000m3で、同社が手がける木造住宅の約8000棟分に相当する。またCO2を炭素固定する量は約10万t-CO2相当となるという。同社はW350計画について「街を森にかえる」コンセプトを打ち出している。 発表当時に試算していた建物の総工費は、従来型超高層ビルの約2倍（6000億円）。ただ現在、技術開発や研究を進めることでコストダウンを目指している。2019年に竣工した同社の筑波研究所新研究棟がその中心的な役割を担っている。 資源小国と言われる日本だが、国土の3分の2が森林で覆われている「森林大国」である。しかし、森林全体のCO2吸収力は人工林の高齢化により低下傾向にある。伐採→使用→植林の資源好循環を確立することが求められている。 また日本では城、神社、仏閣などに木材を使用してきた歴史がある。日本の伝統的な「貫」工法の活用に加え近年、耐火・耐震技術は大きく進歩している。今後は、建物の施主などが木造・木質化建物の総合的価値を評価し、需要が拡大すれば、供給体制の強化とともに、建築コストの低下も期待される。 木造建築物が街中で増えていけば、コンクリートと鉄骨のビルが主流の都市景観に変化をもたらし、視覚的インパクトも与える可能性があるだろう。