「中高層木造ビル」が拓く新たな地平 脱炭素と事業の両立を可能にする
日本初3時間耐火はサンドイッチから思いついた
これまで木造建築物は「可燃性」が大きな問題だった。火災時、火は木材の表面から燃え始まり、中心部に燃え移るため、倒壊までの時間稼ぎをするため外側に薄い「燃え代」を付ける。しかし、スプリンクラーによる消火効果も見込んでも、この設計では高層化が進む木造ビルには安全性の懸念があった。 そこで、この懸念を解消したのが株式会社シェルター(本社:山形市)だ。同社は、「燃え止まり、自己消火、倒壊しない」性能を有した「COOL WOOD」を開発した。 外側の「燃え代」と中心部の「荷重支持部」の間の「燃え止まり層」に石膏(せっこう)ボードを入れた3層構造で、国内初となる2時間、3時間耐火を実現した。国土交通大臣から認定され、日本、カナダ、スイスでは特許を取得している。 石膏ボードを入れるアイデアは耐火性能を上げるため試行錯誤を繰り返す中、同社の木村一義会長が「サンドイッチ」を食べている時に偶然思いついたという。 木村会長は、3時間耐火の認定取得により、法律上最長の耐火時間をクリアし、建物の「階数制限がなくなった」と話す。そのうえで、「木造ビル建築の可能性を飛躍的に上げたと言っても過言ではない」と語る。
国内最高の高層純木造ビルに挑戦した大林組
ゼネコン大手の大林組は2022年3月、柱・梁・床・壁などの地上の主要構造部をすべて木材とした日本初の高層純木造耐火ビル「Port Plus」(横浜市中区)を完成させた。高さ44m(11階)は純木造としては国内最高となる。 建物は宿泊機能付き自社研修施設で、一般には非公開だが、顧客を中心にこれまで延べ1万人近くが内部を見学したという(9月末時点)。筆者もその機会を得たが、通常のビルとは明らかに一線を画していた。計1990m3の木材が、至るところで惜しみなく使われており、7割以上が、国産木材だ。吹き抜け構造が、まるで森の中にいるような立体感も生み出していた。 同社は、これらの木材使用により約1652tのCO2を長期貯蔵できると試算。さらに木材加工から建設、解体・廃棄までのライフサイクル全体で、鉄骨造と比べ約40%(約1700t)のCO2削減効果があるとしている。