最近よく聞く中国製「BYD」の電気自動車って、本当のところどうなのか?
自動車ジャーナリストのレジェンド岡崎宏司氏が綴る、人気エッセイ。日本のモータリゼーションの黎明期から、現在まで縦横無尽に語り尽くします。 1995年の創業以来急成長を続け、BEVの世界ではテスラと覇を競う位置にまで業績を押し上げてきた中国の「BYD」。価格が安いのが一番の特徴とはいえ、魅力はそれだけなのか? 筆者が最新車種「BYD シールAWD」に乗った正直な感想をご報告します。
1995年、BYDは携帯電話やPC用電池メーカーとして創業。瞬く間に業績を押し上げてきた。まだ30歳にも満たない若い会社だが、2003年から参入したBEVの世界でもまた、テスラと覇を競う位置にまで業績を押し上げてきている。 バイデン政権が中国製EVに課した「関税100%」の壁によって、アメリカには輸出されていない。だが、アジア太平洋地域、南米、アフリカ等々にまで手を広げ、今では60カ国近い国々で販売している。 BYDの発展は、中国政府の、EVへの様々な政策面での後押しを抜きには語れない。だが、同時に、BYDの築きあげてきた電池技術や生産技術、あるいは価格面での競争力が、今の位置を築き上げてきたということだ。
ちなみに、BYDの創業者である王伝福会長は「電池王」と呼ばれ、BYDの電池は車載用として世界3位のシェアを持っている。 電池はEVのコストの3割近くを占めるだけに、EVの価格を、あるいは車両コストと利益を大きく左右する。そこに自社製の安価な電池を使えることがBYDの大きな強みになっている。 そんなことで、BYDのいちばんの強みは「価格」にあると言ってもいいと思うが、605万円というシールAWDの価格(ただし、先着1000台成約終了まで)には驚くしかない。 同程度のサイズと性能をもつ輸入EV車の価格は、ざっと1000万円前後といったところ。なので、いくらBYD が新参ブランドとはいえ、誰もが首を傾げずにはいられないほどの価格であることは間違いない。 加えて、EVに対する国や地方自治体の補助金制度や減税措置を活用すれば、シールAWDへの支払額は、600万円を大きく下回る。 性能や品質、デザイン等々については追って印象を報告するが、シールAWDの車格と性能に単純に対比させれば、この価格は、どう考えても「安い!」としか言いようがない。