極寒環境で5分過ごすだけで“睡眠の質”と”気分”が劇的向上？冷水浴がもたらす疲労回復効果とは

忙しい日常生活の中で、質の良い睡眠を確保するのはそう簡単ではない。しかし、最新の研究によると、「クライオセラピー（極寒セラピー）」が、そんな悩みを解決する手助けとなるかもしれない。研究によると、-90°Cという極寒環境でたった5分間過ごすだけで、睡眠の質が劇的に向上することが明らかになった。 〈写真〉極寒環境で5分過ごすだけで“睡眠の質”と”気分”が劇的向上？冷水浴がもたらす疲労回復効果とは ■睡眠改善に効くクライオセラピーとは？ クライオセラピーとは、身体を極低温の環境に短時間さらすことで、身体的および精神的な健康にポジティブな影響を与える療法のこと。モントリオール大学とフランスのポワチエ大学の共同研究では、健康な男女20名（男性11名、女性9名）を対象に、-90°Cの環境で1日5分、5日間連続でセラピーを行った。その結果、睡眠の質や気分に大きな改善が見られた。研究によると、クライオセラピーを受けた日には、睡眠中に深い眠りを促す「徐波睡眠」が平均7.3分増加した。この徐波睡眠は、脳と体の回復に欠かせない重要な睡眠の段階とされている。特に、睡眠の初期段階にあたる最初の2サイクルで効果が顕著で、翌日の活力やスッキリした目覚めに繋がることが期待される。さらに、5日間の連続セッションを通じて、睡眠の質が向上することが確認された。一回のみのセラピーでは効果は現れなかったが、複数回のセッションを経て、徐波睡眠の増加が見られた点が重要だ。 ■気分の改善も実証、女性に高い効果を発揮 睡眠だけでなく、参加者の気分にも改善が見られた。特に女性では、自己報告による「睡眠の質スコア」が5点満点中3.4から3.9に上昇し、自己評価の不安レベルも43から38に減少した。これらのデータから、クライオセラピーが心理的なストレスや不安を軽減する可能性があることが分かる。また、性別による反応の違いも確認され、女性の方が男性よりも効果が強く表れたことが明らかになった。研究者は、この違いが冷却効果に対する感受性の違いに起因している可能性があると指摘している。クライオセラピーの効果は、睡眠改善だけでなく、慢性ストレスや不安の解消、さらにはアスリートの疲労回復にも有効だとされている。欧州では、慢性炎症や軽度認知症の治療の一環としても導入が進んでおり、医療現場でもその利用が広がる可能性がある。 ■サウナ好きにとっても朗報！水風呂などでも効果が期待できる 「クライオセラピー」というと、特別な設備が必要と思われがちだが、自宅で簡単に試す方法もある。冷水シャワーや水風呂を短時間で試すことで、極寒セラピーに近い効果を得られるかもしれない。寒さに身をさらすことで、徐波睡眠の増加や気分のリフレッシュが期待できるため、忙しい日常に取り入れやすい健康法と言えるだろう。また、サウナ好きの人にとってもこの研究結果は朗報だ。サウナで体を温めた後に冷水風呂に入ると、血流が一気に改善され、リフレッシュ感が得られる。この温冷交代浴は、冷水風呂に入ることで得られる冷却効果を高め、睡眠の質向上や気分の改善に寄与する可能性があることが示唆されている。クライオセラピーと同様、冷水浴を取り入れることで、日常的に感じていた疲れを解消し、心身のバランスを整えることができるかもしれない。 ■新たな健康習慣として注目 クライオセラピーの効果は、まだ解明すべき点も多く、長期的な影響やそのメカニズムについては今後の研究が待たれる。しかし、既存の研究データからは、この方法が単なるプラセボ効果ではなく、実際に生理的な変化を引き起こしていることが分かっている。特に、アメリカ疾病予防管理センター（CDC）のデータによると、米国成人の17.8%が「眠りの維持が難しい」と感じており、クライオセラピーはこうした問題に対する新しい解決策となる可能性がある。現代人にとって、短時間で深い眠りと気分の向上を促す極寒セラピーは、忙しい日常に取り入れる理想的な方法となるかもしれない。わずか5分間の冷たい体験が、あなたの眠りや気分を劇的に変える可能性を秘めている。科学的に証明されたこの新しい健康習慣を、ぜひ一度試してみては？ 出典： Exposure to this extreme condition for 5 minutes a day can improve sleep and boost mood, says new study Daily exposure to intense cold can improve sleep quality Intense Cold Exposure Might Actually Help You Sleep Better, Study Shows 文／山口華恵