パリ同時多発テロ 無差別殺傷の脅威は世界に拡散するのか
フランスの首都パリで現地時間13日夜、市内中心部の少なくとも6か所で爆弾や銃撃による無差別殺傷がほぼ同時に発生した。日本時間15日の午後までに、少なくとも129人の死亡が確認され、約350人が負傷し、そのうちの99人は重篤な状態だという。約30分という短い時間の間にパリ周辺の6か所で発生したテロでは、少なくとも8人の実行犯が死亡し(7人は自爆したとされる)、隣国ベルギーでは協力者とされる人物も地元警察による家宅捜索で逮捕されている。実行犯の一人が所持していたシリア旅券をめぐって、ヨーロッパ各国では難民受け入れ反対の声が高まるのは必至で、加えて過激派組織「イスラム国」(IS)に対する各国の武力行使がより積極的に行われる可能性が出始めた。 【写真】高まる「ホームグロウン・テロ」の脅威 対策には何が必要か?
自爆犯はスタジアム内でテロを計画?
パリ市内でほぼ同時刻に発生したテロ。テロは6か所で発生したが、その中で最も大きな被害を受けたのがパリ市内中心部にあるライブハウス「バタクラン」だった。1500人収容のライブハウスでは、事件当時アメリカのバンドの演奏が行われており、そこで発生した無差別発砲によって80人以上が殺害されている。バタクランから徒歩数分の場所で串かつ店を営む伊藤聖一さんは、事件発生時の様子についてこう語る。 「事件発生直後は外で何が起こっているのか全く分からず、後で入ってきたお客さんの話や、やって来るパトカーの数で、ようやく事の大きさが分かった。その日はお客さんも従業員もお店にそのまま残ってもらおうかとも考えたが、みな帰宅したいとのことで、安全を確認してから全員に帰宅してもらい、私も安全を確認してから帰路についた。翌日の雰囲気は、シャルリ・エブド事件の後と同じように、皆が喪に服しているような重い空気になっている」 偶然なのか、バタクランから1月にテロ事件のあったシャルリ・エブド編集部のある建物までは徒歩圏内だ。
パリ検察のフランソワ・モラン検事は14日の記者会見で、サッカーのフランス代表対ドイツ代表の親善試合が行われていたスタッド・ドゥ・フランス周辺で発生した爆発についても言及。入場券を持った男がスタジアムに入ろうとした際、ボディチェックで不審に感じた警備員が男に対し、入場口の近くで再度身体検査を試みようとした。その矢先、男は少し後退し、そのまま着ていた爆弾付きのベストを起爆させたのだという。その3分後にはスタジアムの外にいた別の男も自爆し、さらにその近くにあるファストフード店の前で3人目の男も自爆している。フランスの警察当局は、自爆犯が当初はスタジアム内部で自爆テロを計画していたと断定。もし試合中のスタジアムで自爆テロが決行されていた場合、パニックになった観客の将棋倒しなどで、犠牲者の数が激増した可能性を示唆した。