パリ同時多発テロ 無差別殺傷の脅威は世界に拡散するのか
2008年のインド・ムンバイ同時テロを彷彿
CIAに30年以上勤務し、現在は米ワシントン市内にあるシンクタンク「ブルッキングス研究所」で上級フェローとして外交や諜報活動に関する研究に携わるブルース・リーデル氏は、今回のパリ連続テロ事件と2008年11月にインドのムンバイで発生したテロ事件との類似性と違いの両方を、同研究所のウェブサイトで指摘している。複数の小さなグループが重武装して、同じ町の異なるエリアで同時にテロを起こすという手法がテロリストにとって非常に効果的なやり方だったことは各国の諜報関係者の間でよく知られた話で(ムンバイでは実際に解決までに4日を要している)、この教訓から各国政府は重武装のテロリストに対応できる部隊を迅速に現場に投入するノウハウの構築に努めていた。ムンバイのテロでは、重火器で武装したテロリストに地元警察が対応できず、事件発生後にニューデリーから数時間かけて特殊部隊を送り込んだが、パリの事件では迅速な対応ができたとリーデル氏は評価する。 今年1月にシャルリ・エブド襲撃事件で17人の死者を出したパリで、今度は120人以上が犠牲となる連続テロ事件が発生した。ヨーロッパの中でなぜフランスがターゲットになるのだろうか? フランスが狙われる理由を特定するのは困難だが、それらしい理由はいくつもある。オランド政権は政策を変更し、対IS空爆を行う有志連合に参加した。さらに独自のイスラム過激派対策も行っており、2013年1月から数カ月にわたって西アフリカのマリに5000人規模の兵力を投入し、マリ軍と共に現地のイスラム過激派の掃討作戦を実行している。また、公共の場におけるブルカの着用を法律で禁じたことも記憶に新しい。
実行犯の「シリア旅券」が難民問題に影響も
死亡した8人の実行犯の身元も、少しずつだが判明し始めている。また、実行犯に協力した疑いで、ベルギーのブリュッセルでは3人が逮捕された。 バタクラン劇場で発生した無差別銃撃。事件発生後に周辺の捜査を行っていたフランスの警察当局は、劇場近くに停められていた外国ナンバーのレンタカーを発見。車内にはクシャクシャの状態で放置された駐車違反のチケットがあり、そのチケットはベルギーのブリュッセルのモーレンベーク地区で発行されたものと判明。その情報がベルギーの警察当局にわたり、モーレンベーク地区で家宅捜索を行った警察は、今回のパリ同時テロ事件で車両の提供などに協力した疑いで3人を逮捕している。ベルギーはISの戦闘員としてシリアやイラクに渡る人口別の割合がヨーロッパ内で一番高く、その中でもブリュッセルのモーレンベーク地区は以前からISと繋がりのある住民が少なくないとされ、「テロリストの温床」と指摘する地元メディアもある。