トヨタ豊田章男氏、ユニクロ柳井正氏、伊藤忠岡藤氏。共通点は「話し方」にあった
世界的な原料高騰が続く中、追い風を受ける日本の商社業界。中でも伊藤忠商事は財閥系以外の総合商社として時価総額を大きく伸ばしている。なぜ、伊藤忠は圧倒的な成長を遂げているのか。その答えの一つは、創業以来受け継がれてきた「商人」としての心構えにある。 【全画像をみる】トヨタ豊田章男氏、ユニクロ柳井正氏、伊藤忠岡藤氏。共通点は「話し方」にあった 本連載では、岡藤正広CEOをはじめ経営陣に受け継がれる「商人の言葉」を紐解きながら、伊藤忠商事がいかにして「商人」としての精神を現代に蘇らせ、新たな価値を生み出しているのかを深掘りしていく。 第16回は岡藤CEOが考える、商人が「やるべきではない」こと。
商人は「感受性なんてものはいらない」とは思っていない
岡藤が言う「マーケットイン」「お客さんを見て商売しろ」とは結局、人間を見ていることだ。商品やサービスそのものを見ているのではなく、それを使って便利な生活をしたいと考える人間を注視している。 彼は「人間という存在は面白い」とも思っている。人間を愛して、人間のために何か自分にできることはないかとつねに考えている。 商売がしたい、金を儲けたいが先にあるのではなく、人間の手助けをしたいと望んでいる。 彼が追求しているのは楽しい時間を過ごすことだろう。人間的魅力があって、世間話が面白い仲間と一緒に緊張した時間を過ごす。それが仕事であればなおさらよい。仕事を通して緊張した時間を過ごすことができれば、お互い同士を高めあうことができる。結果としてお金が入ってくる。 人のためになる楽しい時間を過ごすことが彼にとっての目的ではないか。他人を蹴倒して、自分だけが金を懐に入れたいとは少しも思っていない。自分だけが得をするひとり勝ちは商売ではないと考えている。 それが本当の商人だ。
商人は答えを求めているわけではない。自分自身に対して問い続けるのが商人だ
岡藤はつねに自分に対して、問いかけを続けている。 「相手が何を考えているか、客が望んでいることは何か。人間の幸せとは何か」 人に答えを聞きたいわけではない。自分自身で答えを出そうというわけでもない。自分に対して問いを続けることが自分を成長させると信じている。 その根本にあるのが鋭い感受性だ。 本当の商人は感受性で成り立っている。