「もっと誇りに思ってほしい」─自分の“正体”を子供にどう伝えた? レイザーラモンHG夫妻の答え
“HG”への想いと責任感
変わったのは芸名、正確には、HG(エイチジー)が意味するところ。長らく「ハードゲイ、略してHG」と謳っていたものを、頭文字は据え置きで、中身だけ“ホットガイ”と改めたのだ。 「あの現場いなかったっけ? “ハードゲイ”が終わった瞬間……」 とHGが遠い目をして語り出したのは、わりと最近の出来事。 さかのぼること1年と少し前の2020(令和2)年、テレビ朝日の特番「ネタ祭り!2020秋!!」内のワンコーナー、「一発祭り」がその舞台である。コウメ太夫、スギちゃん、ジョイマンといった顔ぶれが一堂に会し、櫓(やぐら)の周りを盆踊りするこの企画。カメラ前にたどり着いた順に、一世を風靡(ふうび)した“あの頃”の芸を披露するという段取りだった。 さて、自分の番がやってきたHG。 「どーもー、ハードゲイでーす! フォーッ!」 といつものパフォーマンスを繰り出したが、何やら雲行きが怪しい。「少々、お待ちください!」と突如撮影がストップ。ほどなく駆け寄ってきたスタッフの言葉に膝から崩れ落ちる。 「すいません。“ハードゲイ”っていうフレーズなしのバージョンもらっていいですか?」 ……「天ぷらうどん、天ぷら抜きで!」のような物言いに、では、なぜキャスティングしたのかと戸惑っても仕方がない局面。 にもかかわらずHGが、「なるほど……」と即座に提案を受け入れたのは、ひとえに、その芸風ゆえだろう。
2000年初頭、“ハードゲイ”の着想を得ると、ニューハーフパブでボーイとして働き、大阪の堂山にある老舗ゲイバーのマスターに教えを請うなど、キャラを練り上げるため情熱を傾けた。 それはそのまま、「自分は、本当のゲイではないから……」とLGBTの問題と真摯に向き合った時間でもあったのである。 結局、「『どーもー!』で腰振って、『平成を彩った、フォーッ!』と。腰振るのはアリだったから……」と“ハードゲイ”どころか“HG(エイチジー)”と名乗ることさえなく撮り直し、事なきを得たものの、「気づいたら免許失効してたみたいな……」と意気消沈。 隣で一部始終を聞いていた妻・杏奈さんは、「若いスタッフさんだから、HGが“ハードゲイ”の略なのを知らなかったんじゃない?」と夫を気遣うが、彼女の説が正しければ、むしろ“傷口に塩”である。