【中学受験】専門家が「言葉のウイルス」と呼ぶ、親が子どもに絶対言ってはいけないひと言
首都圏の中学受験者数は2023年、過去最高を記録した。東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県では18%の子どもたちが受験を経験する一方、第一志望校に合格する子の数はわずか3割。中には「全落ち」という厳しい現実もあるなか、「合格体験記」に決して書かれない真実とは――。本稿は、宮本さおり『中学受験のリアル』(集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「親先行型家庭」と 「子ども先行型家庭」 中学受験を目指す家庭の親たちは、子どもを苦しめてやろうと思って受験を選択しているわけではない。子どもにとって最善の道を考えて、中学受験を選ぶ家庭がほとんどだ。しかし、当の本人にその気がない場合、残念ながら子どもを苦しめてしまうことになる。 だが、相手は小学生だ。高校受験や大学受験と違い、親がどこまで導き、どこからを本人に任せるのか、この線引きが難しい。 私はこれまで首都圏を中心に、中学受験を経験した50家庭以上の話を聞いてきた。直接私が取材したもののほか、私が立ち上げた親子のための中等教育研究所(一般社団法人Raise)でアンケートを採り、ヒアリングを行ったものもある。メールで情報を寄せてくれた家庭を合わせると延べ100件ほどにはなる。寄せられた情報を見ていると、中学受験を選択する家庭には、大きく分けると2つある。 1つは、親が中学受験をさせたいと思いスタートした「親先行型家庭」。もう1つが、本人が中学受験をしたいと言い始めてスタートする「子ども先行型家庭」だ。そして、このざっくりと分けた2つの中でもそれぞれに受験理由はいろいろだ。例えば、「親先行型家庭」の中で、私が最も多く出会っているのが以下のような不安型だ。 「高校受験は大変と聞くから、中学受験で済ませたい」 「小学校の成績が普通な感じ。中学で内申点を取っていくのが難しいかもしれない」 「学区がやんちゃな子が多くて心配」 しかし、不安から中学受験を選ぶ場合、親子ともにかなり苦しくなることがある。第一に、子ども本人への意識づけが難しいようだ。不安型で中学受験に突入したケースでは、多くの親御さんが子どもに対してこんなふうに声をかけている。 「高校受験は大変だよ。中学受験をしたら高校受験がないから楽だよ」 ところが、中学受験は入学することがゴールではない。そこから新たな勉強や学校生活が始まっていく。「あとが楽」と声をかけられてきた場合、子どもは中学受験がゴールではないことに入学してから気づき、「話が違うじゃないか」となってしまう。